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【国際税務】外国税額控除ってそんなに柔軟な制度じゃないと思っています

法人税のはなし

外国税額控除

先日、ふと、感じたのですが、外国税額控除について、外国でかかった税金があったら、なんでも、日本の税額から控除できると思われている方がいらっしゃるように思います。

国外関連所得があるか、日本で税額が生じているか否かということではなく、

「外国での課税=日本で税額控除ができる」

というイメージを持たれているということです。

外国税額控除は国と国の関係

納税者の視点からすると、

「なんで、同じ所得に日本と外国で2回課税を受けるんじゃい。」

となるのだと思いますが、この考え方って、日本国内における税の制度においてのみ、通用する考え方だと思います。

二重課税にならないように、ちゃんと税制の全体の仕組みを考えて、立法してくださいということですね。

ただ、これが日本とそのほかの国との関係でいうと、そうはいかないと思っています。

それぞれの国に、それぞれの都合があって、それに適合する税制を作っているわけです。

また、税の執行の場面においても、日本のような比較的丁寧な対応をしている国もあれば、国の予算が足りないからとりあえず課税してくるみたいな国もあるわけです。

なので、日本の法人税において、「外国法人税」についてその範囲を定めたりしているわけで、外国でかかった税金がすべて、外国税額控除の対象になるわけではありません。

仮に、外国でかかった税金がすべて、外国税額控除の対象となるのであれば、海外で、根拠がない課税を受けてしまった場合でも、日本の税額から控除できるということとなります。

これは国と国の関係で見ると、日本がその国に税金をあげているのと同じになるのではないかということです。

そんなに優しい国がありますかね?と思うわけです。

どうやったらうまく伝えられるのだろうか

外国でかかった税金=外国税額控除できると勘違いしている方には、

「国と国の税金の取り合いみたいなものなので、全部が控除の対象になると思わない方が良いですよ。感覚的には控除出来たらラッキーくらいがちょうどいいと思います。」

と説明をするようにしているのですが、あんまりストンとこないみたいなんですよね。

控除に当たっての要件も、結構厳しい印象が外国税額控除にはあるので(所得税額控除と比べてみるといいと思います。)、実際に適用するにあたっては慎重に対応をした方が良いと思っているのですが、どうやったら、この温度感って適切に伝わるものなのでしょうか。

理由はよくわかりませんが、租税条約での取り決め以上に税金がかかることがあります

本当に海外で根拠がない課税を受けることがあるのか?という点については、海外の税金に精通しているわけではないので、根拠がないとまでは断言できませんが、すくなくとも、租税条約での取り決め以上の税率で課税を受けていたものを見たことがあります。
(条約の手続きをしていないからではないかと思い、手続きをしているのか否かを取引の間に入っていた業者に問い合わせをしたことがあるのですが、税金の話、しかも外国のということもあり、まったく話が通じず、結局、解明できませんでした。)

何かいい事例はないかなと思って、さっと検索してみたところ、下記の事例が見つかりました。

租税条約に定める限度税率を超える外国法人税の額の取扱い|国税庁 (nta.go.jp)

こちらは条約違反ではなく、単に、いったんは国内法で課税しておき、後日還付を受けることが出来るという制度をとっている国での外国法人税の取扱いですね。

ちなみに、還付についても日本と同じ感覚でいない方が良いと思います。

国によっては、数年間ほったらかしにされることもあるようです。

気にせず放っておけばいいだけなのかもしれません

クライアントがこのような勘違いをされている場合は、全力で是正をしていますが、同業でこのような勘違いをされている場合は、気にせず放っておけばいいのかなと、最近は思うようになりました。

私が、たまたま、こういった曲者の課税事例を目の当たりにする機会があったので、特に国際関連の税務については、かなり警戒する癖がついていますが、こういった機会がない方に、一生懸命伝えようとしても、あまり伝わらないように感じるためです。
(実際に経験をしてみないと、おそらくストンとこない。)

経験上危ないと思い、伝えているのですが、まったく聞く耳を持たれない印象を受けると、とてもむなしい思いをします。

「まぁ、先方もプロなわけだし、自分で頑張って調べてください。」

というスタンスでこれからはいようと思います。
(先方も特に望んでいるわけではないと思いますし。)

外国税額控除って、計算の仕組みもややこしいので、そっちに目がいきがちですが、二重課税の排除の仕組み(外国税額控除方式と国外所得免除方式など)など、もう少し大上段の内容から、新ためて勉強してみると、いろいろと発見がありそうですね。

日々精進。


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