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【国際税務】移転価格税制における子会社貸付金利子率(その2)

法人税のはなし

2021年7月14日に書いた記事

2021年7月14日に、「移転価格税制における子会社貸付金利子率」に関する記事を書いたのですが、少しだけ補足をしておきたいと思い、この記事を書いています。

移転価格税制における子会社貸付金利率

在外子会社を保有している日本法人があるとします。

海外に進出したばかりで、事業を起こしている段階ですので、資金が恒常的に不足しており、親会社から在外子会社に貸付けを行っているとします。

このような場面で、最近のブームに乗っかると、

「移転価格税制の論点がありますので対応が必要となりますよ」

というアドバイスをすることとなるのですが、一つ、注意が必要です。

はっきりいって、数千万円単位くらいで貸し付けをしているような金額感においては、そこまで意識する必要はないと思います。

億単位の金額が頻繁に動いており、貸付総額が数十億円単位になったくらいに、意識をすることで十分ではないかと思っています。

まったく意識しないのは確かに論外だけれども

否認されたとしても、金額がそこまで大きくならないということも、もちろんあるのですが、それだけが理由ではありません。

まず第一に、もっと他に対応を優先すべき事項があると思っています。

海外絡みの税務は、出向者負担金の取扱いや、その他各種費用の負担関係、消費税、源泉所得税など、まだほかにもたくさんあります。

そして、こういった基本的な項目の対応が出来ていない法人がまだたくさんあり、そういった項目をほったらかしにして、移転価格税制の対応を急ぐというのは順番が違うのではないかと思っているということです。

次に、移転価格税制では、きっかりの答え(値)がでることはないこと。

コンサルタントの方の提案内容や、そのほかの方のお話を聞いていて思うのですが、移転価格税制にきちっと対応をすれば、絶対唯一の答え(値)がでると勘違いされているように感じます。

そして、絶対唯一の答え(値)に基づいて、国税がもれなく否認してくると思っておられるようです。

移転価格税制のレポートを読んだことがある方ならお分かりいただけると思うのですが、絶対唯一の答えを出しているのではなく、いろいろな情報を使って、妥当と思われるレンジを出しているくらいです。

そしていろいろな情報の選び方も、答えがあるものではなく、情報の使い方次第で、結果がガラッと変わることもあるように思います。

移転価格税制のこの論点を気にされている方のお話を聞いていると、手段が目的化しているように感じることがあります。

あるべき取引金額(利率)を設定できればよく、そのためには、必ずしも、データベースを購入したり、計算方法の導入後に会社の人たちで自立して運用できるのか疑問を感じる計算方法を取り入れる必要はないわけです。

租税研究2023年4月号

件の記事のアクセス数が安定して伸びておりまして、公開日付が古いので、新しい情報ではないことはわかるだろうということと、過去の記事を見返して最新の情報に逐一更新するなど、不可能ですので、ほったらかしにしていたのですが、なんだか、自分の記事が、

「移転価格税制の対応が必須ですよ。」

というアナウンスに取られてしまってはいないかと、ふと気になり、この記事を書きました。

おそらく、

「本当にここまでの対応が必要なんですか?」

という疑問を持たれた方が多くいらっしゃったからだと思いますが、租税研究2023年4月号の「移転価格事務運営要領(事務運営指針)の一部改正等について」という講演録に、下記の記載がありましたので、引用いたします。
(詳細は定期購読されるなりしてご確認ください。)

「今回の事務運営指針の改正は、必ずしも一律に全ての法人について適用することを意図したものではありません。」

「また、信用格付に当たっては、納税者の方、法人に対して過重なコンプライアンスコストをかけてまでこの取扱いの例を用いなければならないということではありません。」

人様の商売の邪魔をしたいとはまったく思いませんが、軽自動車で十分な人に、保有コストなどを考えずにベンツを売ろうとしているように見えてしまい、

「いや、軽でいいんじゃないですか?」

と、どうしても言いたくなってしまい、書きました。

日々精進。


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