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【国際税務】グローバル・ミニマム課税と税効果会計

会計のはなし

ASBJが実務対応報告公開草案64号を公表

2023年2月8日に、実務対応報告公開草案第64号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」がASBJから公表されました。

実務対応報告公開草案第64号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」の公表|企業会計基準委員会:財務会計基準機構 (asb.or.jp)

内容は、グローバル・ミニマム課税については、税効果会計の適用をしないというものです。
(正確な表現は「税効果適用指針の定めにかかわらず、グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しない」です。念のため。)

この税制に税効果会計が適用されてしまうと、現場の方々はかなりしんどい思いをすることとなってしまうように思いますので、このような取り扱いとなって(案ですし、当面の取扱いに過ぎませんが)、良かったと思います。

いつもは、読んで、へぇ~で終わっているのですが、なぜかこの情報には興味を持ちましたので、少し書いてみようと思います。

資産負債法と繰延法

公表された草案には、審議の内容をまとめたものが記載されているのですが(会計基準の結論の背景と同じ個所)、その一つに、税効果会計が資産負債法によっているので、その考え方によると、果たしてこの税制に税効果会計を適用すべきなのかの議論が必要、といったことが書かれていました。

資産負債法というのは、税効果会計の対象となるものを、税務と会計で資産負債の金額に差異が生じているものとする考え方です。

なので、実務的には、法人税別表5(1)に留保されている項目と金額を基にして、税効果会計を適用しているわけです。
(別表5(1)には、税務と会計とで差が生じている項目が蓄積されているからです。繰越欠損金については別表5(1)に記載されませんが、この説明は割愛します。ご興味がある方は税効果会計に関する会計基準をお読みください。)

対して、繰延法という考え方もあるのですが、これは、税務と会計の損益の違いに着目して税効果会計を適用するものです。ご参考までに。

税効果会計が岐路に立たされている?

グループ通算制度といい、グローバル・ミニマム課税制度といい、税効果会計が採用している資産負債法では、取り扱いを整理できない税制が増えてきているなぁ~という印象を持っています。
(あんまり詳細に調べていませんが、感覚として。)

グローバル・ミニマム課税は、ざっくりいうと、諸外国にある子法人の税率が一定値を下回っている場合に、親会社がその差率にかかる税金を納めるという制度ですので、資産負債法でも繰延法でも整理がつかないように思っています。

個人的には資産負債法に馴染んでいるのですが、そろそろ違う考え方を編み出す必要が出てきているということなんでしょうか。

グローバルでの収入で1,000億円って意外と対象となる会社がある印象

グローバル・ミニマム課税制度の対象となる会社は、

「企業グループ等のうち、各対象会計年度の直前の 4 対象会計年度のうち 2 以上の対象会計年度の総収入金額が 7 億 5,000 万ユーロ相当額以上であるもの等」

とされています。

円換算すると、確か、だいたい年間1,000億円の収入となるため、絶対数としてはそこまで多くないと思われるのですが、思っている以上に、該当するであろう法人がいる印象です。
(税務署で税務調査をしていた頃は、売上高1,000億円を超えている企業がこんなにあるとは知りませんでした。)

この規模の会社となると、もともと、移転価格税制の関係でいろいろと対応を求められていたはずですので、その延長といった感じなのかもしれませんが、またもや対応すべきことが増えてしまいましたね。

もしも、この税制に税効果会計が適用されますなんてことになったら、経理部の人たちが困ってしまうだろうなぁ~なんて思いつつ、税務が会計に影響する事象だったので興味があり、少し書いてみました。

実務に役立つ情報は一つも書いていませんが、グローバル・ミニマム課税制度や税効果会計に興味を持つきっかけになれば幸いです。
(ならないか。)

日々精進。


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