相続税目的だけのHD化
お仕事の関係で、相続税を減少させるためだけの目的で、HD化を進めている(もしくは、提案されている)場面に遭遇することが何度かありました。
HD化することで親子会社を作り、親会社と子会社の財産評価通達上の評価方法の違いを利用して、含み益が税務上の株価に反映されないようにするという方法です。
税務上の観点からは、そんな形式的なことをしても、否認されるのがオチだと思っているのですが、それよりも、非常に疑問を感じるのが、税務以外の観点から検討された形跡がまったくない場合があることです。
相続税軽減策の実行後の仕上がり図を見てみると、めちゃくちゃな組織図(グループ関係?)となっていたりします。
確かに、株式に税務上価値があると言っても、非上場企業であれば、換金価値はほぼないですし、それに対して多額の相続税・贈与税を払うこととなるのは避けたいという気持ちはわかるのですが、
「税金減らすためにビジネスやっているんですか?」
と聞きたくなってしまいます。
子会社を作って、そこに従業員を置いて、また、それとは別に子会社があったりする場合、何かしらのビジネスリーズンがあって、そうしているのではないでしょうか。
それを放棄してまで、否認される可能性が高いスキームを実行するのって、相続税という計算上計ることのできるものを減らすために、目に見えない、お金では買うことのできない、構築するために多大な時間と労力を費してきたものを失っているように思う訳です。
しかも、
「事業承継をばりばりやってきました!!」
みたいなアドバイザーの方が、普通に提案していたりするんですよね。
う~ん。
人によっていろいろと考え方があってもいいとは思うのですが、本当にその提案ってクライアントのためになっていますでしょうか。
提案を受けた方にどうやって、このストラクチャーが出来たのかを聞いてみると、アドバイザーの方に決算書などのデータを共有して、何回か簡単な会議をしたら、このストラクチャーが出来上がったなんてこともありました。
ビジネスなのでしょうがない面もあるとは思うのですが、この借入れ、本当に必要かね?みたいなこともちらほら。。
「プロが言うんだから大丈夫でしょ。」
といった風に信頼しちゃうみたいなんですよね。
何かしらの提案を受けた際は、セカンドオピニオンとして、税理士でもいいですし、そうではなくて、ちゃんと経営をやっている方に経営者の観点から相談してみた方が良いのではないかと思います。
(プライベートな内容なので、相談しにくいものなのかもしれないですね。)
常識を持った人が見ると、
「なにこれ。。。」
という提案がゴロゴロあるように思います。
税経通信2023年6月号の特集
外野が吠えても何も変わらないとは思いつつも、相談を受けた際は、出来る限り、税務以外の点も含めてお伝えするようにしていました。
「本当に、このスキーム実行しますか?」
「税金が減ること以上のもっと大きな物を失ってはいませんか?」
と。
といった、とてもちっぽけな活動をしていたところ、税経通信2023年6月号でホールディングス化についての特集がありました。
「うわぁ~、また、形式的な違いで相続税を減らす方法の提案が書いてあるのかなぁ、、、」
なんて思いつつ、読んでみたところ、とても素晴らしい内容でした。
表紙に、
「複合的な事業承継問題を解決するなら」
と書かれているのですが、まさに、税務だけの観点ではなく、よく言われている、
「所有と経営の分離」
「M&Aの実行の容易さ」
に始まり、
「生え抜き社員の抜擢(ばってき)」
などといった実務的な観点からのホールディングスの活用方法について、説明されていました。
「単に節税のために持株会社化するのであれば、まったく意味がない。」
という熱いメッセージもありました。
同意です。
とても勉強になりました。
ほっとしました
一人で事務所をやっていて、この手の、あちゃーな提案などを目にしてしまうと、そういった人たちが、
「この業界の大半を占めているのかなぁ、、」
なんて、寂しい気持ちに陥ってしまいがちです。
いつの時代もマイノリティは弱いので、そういった人たちが大半なのだとすると、
「そんな形式的なことしても否認されまっせ。」
であったり、
「税務以外の観点以外からも考えましょうよ。」
なんて言っていると、
「いずれ、淘汰されてしまうのかな。」
なんて、思ったりもするのですが、この特集で同じ思いを持たれている専門家の方がいらっしゃることを知ることが出来て、嬉しかったのと同時に、少しほっとしました。
前にも似たようなことを書いたような気もするのですが、書きたいことを書くのがこのBLOGの方針ですので悪しからず。
日々精進。