税金の認識のタイミング
税務上は申告納税方式の税金について、基本的には申告書を提出したときに認識するという取り扱いとなっていますが、会計上は申告書を提出していない状況であっても、調査官から調査結果説明を受けるなどして税額が確定した場合、それが決算日後であったとしても直前の決算期の税金として認識するという取り扱いとなっています。
この税金の認識のタイミングの相違により、調査官と納税者(上場企業)とで、かみ合わない議論が生じてしまうことがあります。
3月決算法人と調査結果説明
3月決算の上場企業の場合、おおむねGW明けくらいに決算短信を発表しているので、実務上は4月中くらいには単体決算書の数値を固めているのが一般的と思われます。
よって、単体決算書の数値が固まった時点(4月下旬)から株主総会(6月下旬)までの間に、国税当局から調査結果説明などを受けて追徴税額が確定すると、税金の追加計上が必要となることで、これまでに作成していた招集通知等の各種書類の数値を修正するという事態になってしまう可能性が生じます。
そのような事態を避けるため、調査官に
「株主総会後に調査結果説明をして欲しい」
と伝えた場合どうなるのでしょうか?
残念ながら、このような事情を調査官に話しても
「そうですか。わかりました。では7月以降に税務調査説明をしましょう」
とはなりません。
もちろん、ある程度は柔軟に対応はしてくれるとは思うのですが。
調査官は会計上の取り扱いに明るくないため、税金の計上時期は更正通知書日付もしくは修正申告書の提出日だと考えて、3月を過ぎれば、本件調査の指摘による税金の計上は進行期になると考えます。
調査結果説明が行われたことを理由として、直前の決算期で税金を計上する必要性が生じるなど知る由もありません。
また、仮に計上が必要である旨を説明して理解してもらえたとしても、調査官は決算業務を経験したことがないため、
「税金の仕訳を入れるだけで何がそんなに大変なの?PLの税金を追加計上して、別表4で否認するだけでしょ?」
と考えますので、一度作成し始めた招集通知等を修正するという作業の大変さが伝わることはないと思われます。
さらに、国税当局では定期人事異動が毎年7月10日に行われているのですが、7月に異動するにあたっては仕掛事案を残すことは良しとされていません。
よって、調査官としてはなんとしても6月中に税務調査を終わらせたいと考えて行動します。
これらが原因となって、納税者の必死の説明にもかかわらず、調査官と話がかみ合わず、結果として調査結果説明が行われてしまうことがあるようです。
どのように対処したらいいのか?
経理業務を担当されていると、税金計算は1円ぴったり合わせる必要があると思われるようなのですが、決算書での未払法人税の計上額と法人税申告書の納税額が多少ズレていたとしても、会計監査では一応は誤謬として取り扱うものの、実務的にはそれが何か大きな問題となることはほぼないと思われます。
(バックテストと言って翌期の監査で計上額と申告納税額に差が生じていないかを確認していますので、その時点で差額が生じていることを把握します。)
よって、調査結果説明を受ける前から、調査官と修正若しくは更正される項目をある程度確定しておき、それらについては調査結果説明を待たずに未払法人税等を計上してしまうということで対応可能なのではないかと思われます。
最終的に決定した追徴税額と見積もり計上額に差異が生じたとしても、進行期で差額を費用として認識すれば問題ないと思われます。
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