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【会計】「スマートフォンゲーム等における収益認識基準に関するガイドライン」を読んで

会計のはなし

ガイドラインの公表

一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムが「スマートフォンゲーム等における収益認識基準に関するガイドライン」を公表していました。
スマートフォンゲーム等における収益認識基準に関するガイドライン (2020年3月)

会計処理を検討するにあたっては、業界の取引慣習などをしっかりと理解する必要があると考えているのですが、会計士がすべての業界に精通することは到底不可能ですし、それらの業界に実際に身を置いている方々と比べると、業界に関する知識・経験において勝ることはまずないと思っています。

よって、このように業界団体を通じて会計基準に関するガイドラインが公表されるということは大変有意義なことだと思っています。

ちなみに、このガイドラインの「5.おわりに」がとても印象的でした。

ガイドラインには、世の中の技術は進化しており、ゲーム業界における技術も同様に変化している。また、ゲームといっても国によって遊び方などが違う。こういった事情を踏まえることなく、海外の前例にならうべきだといった前例主義を持ちだすことは避けるべきだといったことが書かれていました(かなり端折っているので詳細は当該ガイドラインをご確認ください)。

監査法人在籍時

監査法人に在籍していた時に、ゲームの収益認識について検討したことがあります。
収益認識の時点として、

  1. ユーザーが課金してゲーム内通貨を購入した時点
  2. ユーザーがゲーム内通貨でアイテムを購入した時点
  3. ユーザーが購入したアイテムを使用してそのアイテムが壊れた時点

などが考えられ、いずれも会計理論的には正しいのかもしれませんが、果たして現実的なのか?というのが正直な思いでした。

ゲーム内通貨を購入したタイミングで収益認識すべきという考えについては、当該時点でお金の動きがあるので、取引事象を把握することが比較的容易であり、納得感があるように思うのですが、その通貨でアイテムが購入された時、はたまた、アイテムを使い切った時に収益認識するとなると、実業のために当該情報が必要がないのであれば、会計の収益認識のためだけに、それらを認識する仕組みを企業は導入することとなってしまうように思います。

会計の観点からの要請を満たすためだけに企業側に過度の負担を求めるものは、個人的にはかなり違和感を感じておりまして、実際に会計監査の場面で、会計の目的のためだけに何かしらの対応をお願いすると、受け入れ難い、といった対応をされることがよくありました。

確かに上場企業などは開示義務を果たす必要があるとは思いますが、会計士しか気にしないような細かなマニアックな論点についてまで、会計士が納得がいくようにするためだけに、企業に負担を求めることが、果たして経済にとって良いことなのだろうか?と思ってしまいます。

前例主義

監査法人に在籍している会計士すべてが、このようなことでは決してないのですが、会計処理について検討する際に、公表されている会計基準で該当するものがないか、書籍等で解説されていないか、IFRSやUS⁻GAAPなどで、既に取り扱いが公表されているものはないか、同業他社はどのような会計処理を行っているのか、といったことをリサーチするのですが、取引の背景事情等をしっかりと理解して、積極的に自ら答えを導き出すといったことをすることはあまりなく、リサーチにより得た情報をアンサーとしがちなように思っています。

その他、監査法人にいると開示チェックという、公表前の有価証券報告書(四半期報告書)の記載内容をチェックする業務があるのですが、開示書類の記載内容の適否の判断は、基本的には印刷会社(宝印刷など)が出版している記載例を参考にしたり、開示ネットなどの有報検索サービスを利用して、他社の開示事例を探し、過去において同様の開示事例がないか探すことで行っています。

過去、他社があたったことがないような特殊な事象が生じた場合に、このような検討の仕方で記載内容の適否を判断することはできるのでしょうか?

前例に依拠するということだけを続けていると、あるべき処理を自分の頭で考えるという訓練をすることができず、また、実務の肌感覚を得ることができないのではないかと思っています。


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