税法で数値基準が明確になっていない理由
税法には、たとえば同族会社の判定など数値基準が条文に明確に書かれているものもあれば、組織再編税制の適格要件(特定役員引き継ぎ要件など)のように、何年経過すればOKといった風に数値基準が明確に書かれていないものもあります。
個人的な考えですが、数値基準を明確に規定していないのは、それを逆手にとって、税金をちょろまかそうと考えるような納税者もいるので、そういった納税者を意識して明確に規定していないだけであって、真面目な納税者をも含めて自由に課税できるようにしているわけではないと思っています。
質問したら答えが出るのか?
組織再編税制に関する研修を受講していた際に、税法で数値基準が明確に書かれていない要件について、
「条文に明確に書かれていませんが、実際は何年だとOKなんですか?」
といった質問を何度も研修講師にしている受講生の会計士さん(同様の質問を国税当局に問い合わせたらしい)がいて、
「プロとしてどうなのかなぁ、、」
と思ったことがあります。
たまたまこういった質問をしている会計士を見たことがあるだけですので、会計士全般がこのような方では決してないともちろん思っていますが、聞いたところで答えがあるわけではないし、
「事案によりけりです」
が答えなのではないでしょうか。
「一般論として何年くらいと言われているのでしょうか?」
といった聞き方であれば、まだ理解できるのですが、いったい彼はあの質問で何を得たかったのでしょうか。
会計監査マニュアルとの違い
会計監査では、会計監査マニュアルに沿った監査手続きが求められるのですが、このマニュアルにはサンプリング件数やサンプルのカバー率についても数値化されているので、ルールに数値基準が明記されていないことが気持ちが悪かったのかもしれません。
先ほどの会計士さんは、
「税務判断を行う側からすると予見可能性がなく、いつ課税されるかわからないので気持ちが悪いし、あるべきスタイルではない」
といったこともおっしゃっていました。
これに対して、講師の方は、
「何年経ったから一律OKということでもないし、期間が長ければ良いということでも、反対に短いから駄目ということでもない」
と回答されていました。
(質問した会計士さんは不満そうでした。)
過去にも似たような経験があります。
監査法人在籍時に監査マニュアルの大幅な改定があり、マニュアル室から改定後の監査マニュアルの説明会があったのですが、マネージャークラス(監査現場を管理するランク)の方が、ひたすら
「金額基準がいくらくらいなのか」
をマニュアル室に質問をして探りを入れていました。
質問タイムが設けられていたので、
「質問をしないでくれ」
とまでは言いませんが、マニュアル室側においても、そもそも金額基準を設けていないように思われましたし、仮に設けていたとしても、公表していない情報を説明会の場であえて公表するとも思えず、
「無駄な時間になるから勘弁してくれ」
というのが正直な思いでした。
明確になっていないからこそプロとしての価値があるのでは?
税法に限らず、ルールには明確にされていないことが世の中にいろいろとあるわけで、この明確になっていないことについて、プロは実務の経験や専門知識からその勘所や温度感を把握できているからこそプロとして存在できるのではないでしょうか。
単なる情報屋にならぬように。自戒の念を込めて。
日々精進。