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【会計】「未払費用・未払金」「前払費用・前払金」問題

会計のはなし

会計監査では、勘定科目もチェックしています

流動から固定、固定から流動といった風に区分を跨ぐ場合は、流動性比率などに影響しますので、しっかりと是正した方がいいように思うのですが、流動資産・負債内での勘定科目の違いなのに、意外と会計士が食いついてしまう論点として、「未払費用・未払金」「前払費用・前払金」のいずれが正しいのかというものがあります。

短期前払費用の取り扱い

この論点、税務調査を行っていたときに調べたことがありました。

具体的な内容は忘れましたが、単発で何かしらの発注を行って代金を前払いで支払っていたものの、役務提供は翌期だったという取引があったのですが、これが損金に含まれていたので指摘したところ、

「短期前払費用(法基通2-2-14)の取り扱いがあるので、当期の損金で問題ない」

と、顧問税理士がおっしゃったことがありました。

「ちょっと無理があるでしょ~」

と思いつつも、

「そういえば「前払費用」と「前払金」の違いをしっかりと調べたことがないな」

と思い、その税務調査とは関係なく、税務大学校の和光校舎に行くことがあったので、図書室へ行って、会計用語辞典などを使って調べました。

企業会計原則によると

「企業会計原則」の注5(1)(3)でそれぞれについて下記の通り説明がされています。

前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の費用となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。また、前払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による前払金とは区別しなければならない。

未払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、すでに提供された役務に対していまだその対価の支払が終らないものをいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過に伴いすでに当期の費用として発生しているものであるから、これを当期の損益計算に計上するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、未払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による未払金とは区別しなければならない。

ということで、期間対応をとっているものが、「前払費用」ないし「未払費用」で、それ以外のものは「前払金」ないし「未払金」として表示されることとなります。

お給料に関する項目はどっち?

ここまでは納得がいくのですが、給与に関連する項目、給料日前のお給料や社会保険料等の会社負担分などが、「未払金」なのか「未払費用」なのかで意外と会計士で意見が分かれます。

個人的には「未払費用」がしっくりきます。

「継続して役務の提供を受ける場合」で、「すでに提供された役務に対していまだその対価の支払が終らないもの」だと思うので。

とはいえ、他社例も見てみようということで、当時自分が関与していたクライアントの処理を見てみたところ、会社によって、まちまちでした。

監査の現場では根拠よりも、フィーリングが重視される場面もありますが、その時々の会計士のフィーリングで判断した結果、このような状況になってしまっているのかもしれません。

労働集約型の事業を行っているクライアントの場合、この給与関係の未払○○が結構多額になるので、監査チームの主任が変わるたびに論点になって、「未払費用」と「未払金」とを行ったり来たりしているといった監査現場もあるような話しもありました(裏どりはしていません。)。

ちなみに、「未払従業員賞与の財務諸表における表示科目について」(リサーチ・センター審理情報No.15)では「未払費用」と「未払金」について解説をしてくれています。ご興味がおありの方はご確認ください。

https://jicpa.or.jp/specialized_field/files/00761-002366.pdf

念のためですが、上記はまったく本質的な議論ではないですし、決めの問題(比較可能性が担保できていれば良いのではないかと思います)なように思われますので、一人の会計おたくの戯言だと、軽く流していただけますと幸いです(でも、こういう論点が好きです。)。

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