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税務リスクを自動分析

印紙税のはなし

データアナリティクス

PwCが会計システムや稟議書のデータなどを網羅的に分析して、税負担の軽減を意図した不適切な売り上げの繰り延べや、子会社の損失補填が疑われる事例を発見しやすくするサービスを始めるという記事がありました。

私が監査法人に在籍していた頃から、会計監査手続きとしてデータアナリティクスの導入が始まっていたので、いよいよ外販するくらいの精度になってきたということでしょうか。

対象は特別国税調査官所掌法人(調査部特官室が所掌している法人)とのことですので、かなり大規模な法人が対象のようです。

そもそもこの規模の法人で、不適切な売り上げの繰り延べが行われるのか?という素朴な疑問はあるものの、コンピューターができることはどんどんコンピューターにやってもらった方が良いと考えているので、とてもいい流れだと感じています。

ちなみに、数年前になるのですが、とある税理士法人が組織再編税制の適格・非適格判定をAIで行うことを考えており、開発中という話を聞いたのですが、それはどうなってしまったのかが、非常に気になります。

印紙税の判定を、AIで出来ないのだろうか?

印紙税の判定をAIにやらせようとすれば、出来るのではないかとずっと思っています。

印紙税の税務調査などで、さまざまな契約書を見てきて感じていることですが、細かな違いはあれど、だいたいどの契約書も同じような条項が同じような文言で記載されています。

よって、AIに理解させるための契約書のパターン化がしやすいのではないかと思っています(この分野の技術に明るいわけではありませんが、パターン化しやすいと仕組み化しやすいのかなと思っています。)。

また、印紙税の判定は、慣れてくるとみるべき条項がわかってくるので、それらの条項をパッと見て、課税事項になりうる記載がないかを確認しています(判定に当たってのあるべきは、契約書のすべての文言を読むべきなのは理解しているのですが、契約書が定型ではなさそうな場合くらいにしか、全部読みはしていません)。

よって、AIに勉強させる必要がある内容も、他の税目に比べるとぐっと少なくて済むのではないかと思っています。

印紙税の税額表を見ると、課税の対象となる文章がたくさん表記されているので、AIに勉強させる必要がある範囲が結構あるのではないかと思われるかもしれませんが、主なところで、1号文書(不動産の譲渡に関する契約書など)、2号文書(請負に関する契約書)、7号文書(基本契約書)を気にしておけばよく、それ以外は、3号文書(手形)や4号文書(株券)のようにそもそも契約書ではないものや、課税されても1通200円と少額で課税インパクトが大きくないもの(15号文書、債権譲渡に関する契約書など)ですので、検討の対象に含めなくてもいいのではないかと思います。

17号文書(領収書)は記載金額に応じて印紙税額が変わりますが、契約書が領収書に該当することはまずないように思われ、これも検討の対象からはずしてしまっても問題はないように思います。

どうやってAIに学ばせるかですが、市販されている印紙税の書籍には、契約書の抜粋とともに、どのような条項があれば課税となるのかについて解説されていますので、それらをすべて与えることで学ばせることができるのではないかと思います。

加えて、印紙税の税務調査の経験のある国税OBを集めてきて、彼らの視点を取り入れれば、結構な確度で判定できるような仕組みができるのではないかと思います。

少し気になる点として、委任と請負の判定が難しそうに思いますが、「開発」という文言が入っていれば一義的には請負と判断するなど、特定の文言でひっかけるようにすることで解決するのではないかと思います。

上記以外にも、印紙税法は、他の税法と違い、基本的には契約書の文章を字の文のまま読んで判定するので、この特徴からもAIに判断させやすいのではないかと思います。

そもそも需要があるのか?という問題

印紙税のために専担者を置いているような規模の会社であれば、少しは需要があるかもしれませんが、開発費含みの販売価格となると、高額なサービスになるように思われ、高額なわりに、「印紙税の業務が効率化できます」といった、私と印紙税の専担者の方くらいしか喜ばないような売り文句となってしまい、印紙税に日々関わっている人以外は、まったく魅力を感じないように思います。

そもそもの需要がそこまで大きくなく、昨今の電子化の流れから紙の契約書を作成することそのものが、過去のものとなっていくことが考えられますので、実際に開発を試みる会社なんて、出現してくれないのだと、悲しいですが、思います。

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