税経通信の新連載
税経通信という税務専門誌で「北千住税語り」という新しい連載が始まっていました。
そのなかで、税理士試験の税法科目に「国税通則法」が含まれていないが、実務では大切な法律なので学ぶべきといったことが書かれていました。
確かに、言われてみれば、これだけ確認する頻度が高い税法なのに、税理士試験の税法科目に含まれていないんですね。
酒税などの、特定の地域で特定の業種を担当していないとお目にかかることのない税法を選択するくらいなら、国税通則法を勉強した方が実務に役に立つように思います。
税務大学校
「国税通則法」に一番初めに触れたのが、税務大学校での講義です。
「所得税」や「法人税」であれば、その名称から、具体的にどのような税金の勉強なのかがイメージできるのですが、「国税通則法」という名称からは、いったい何の税金に関する法律なのかがイメージできませんでした。
また、講義の内容も、一般的な税務用語の説明や、日数の計算方法や加算税の計算方法などが多かったので、税大にいた頃は、
「なんでこんなことを勉強するのだろうか?」
というのが率直な感想でした。
税務署での実務
税務署に配属される頃には自分の背番号(担当する税目)が決まっているのですが、自分が担当している税目についての知識を一番使うのは当然のこととして、意外にも、その次に一番よくお世話になったのが国税通則法でした。
申告書の収受後の入力業務や各種書面の発送事務を担当している内部部門にいた頃に、当時はやり始めたレターパックのようなもの(郵便局が取り扱っているものではなくて、ほかの民間業者のサービスだったと思います)が、信書に該当しないので、税理士事務所が申告期限ぎりぎりに発送した申告書が、発信主義でなく、到達主義(実際に税務署に届いた日)となり、軒並み期限後申告扱いとなってしまったといったことがあったのを覚えています。
(統括官が税理士事務所に電話をたくさんかけていました。信書に該当しないので、期限後申告扱いとなる旨を伝えるためにです。)
発信主義の適用範囲を定める告示の制定|国税庁 (nta.go.jp)
税務調査でも使います
税務調査でも、すごく、使いました。
質問検査権の条文ではなく(そもそも昔は各税法に定められていました。)、加算税の計算にです。
税務調査の最後に口頭で説明をする必要があるということもありますが、決議(内部の決裁)において、通則法をちゃんと理解していないと、困ってしまう場面もありました。
(KSKが自動で計算してくれるのですが、機械は間違えませんが、人間は間違えますので。)
加算税以外にも、「送達」という手続きがあるのですが、送達の方法も、「交付送達」などいろいろな種類があるのですが、今、自分が行っている「送達」がどの送達の方法なのかなどを意識する必要があったのを覚えています。
国税通則法(令和5年度版)|税大講本|税務大学校|国税庁 (nta.go.jp)
法律事務所在籍時
法律事務所在籍時に、一番勉強になったなと思っているのが、「国税通則法」です。
それまでは、「国税通則法」といっても、どういったルールになっているのか調べるくらい(税大の講本や図解で足りる)だったのですが、法律事務所では、どういった論点があるのかなどを調べる必要があったからです。
その時に使用していたのが、下記の書籍です。
国税通則法精解(令和4年改訂) | 出版物のご案内 | 大蔵財務協会 (zaikyo.or.jp)
法律事務所に在籍していなかったら、まず、購入することはなかったと思います。
(ちょっとお高め、かつ、内容も難しめです。)
超絶マニアックな延滞税の計算や、そもそも「申告書」ってなんなの?といった風な、もう一生調べることはないだろうなという事案や、普段使いしている何気ない専門用語の定義を深く知ることができます。
えっ、こんな論点があったの?(アカデミックな議論?それとも実際に過去にもめた?)といった発見もありました。
深い知識を身に着けることに喜びを見いだせるタイプの方には、この書籍はお勧めです。
(めっちゃ分厚いですが。そして、縦書き。)
経験を積むほどに感じる基本の大切さ
なぞに、「国税通則法」が大切であることを一人語りしていますが(しかも、税理士としてではないという、情報の有用性の低さ。)、「国税通則法」に拘わらず、基本って大切だなと経験を重ねるごとに思うようになってきました。
「法人税法」にしても「消費税法」にしても、「源泉所得税(所得税)」にしても、基本となる部分があって、それを土台にして、いろいろな制度が成り立っていると思っています。
ところがどっこい、基本となる部分をすっとばして、枝葉の制度の部分だけを知ろうとする方の多いこと多いこと。
基本をすっとばして、枝葉の制度の部分だけを学ぼうとするのは、村上が税大の頃にやろうとしていたことですので、つまり、駆け出し以下の人間がやるようなことですので、ぜひ、基本をしっかりと学ばれることをお勧めいたします。
(具体的な内容ではないので、勉強していて楽しくないのはわかるんですけど、プロなんで。)
日々精進。