昔のサッカーと今のサッカー
サッカーワールドカップ、惜しくも、PK戦で負けてしまいましたが、その関連でサッカー関連の情報をよく目にします。
その中で、
「昔のサッカーの日本代表選手と今のサッカーの日本代表選手を比べてみると、今の代表選手でテクニックに問題ありとされている選手が、1990年代の日本代表に入ったら、断トツでうまい選手扱いされるに違いない。なので、1990年代の選手が、さも自分の方が上かのようにコメントすることに違和感を覚える。」
といった内容のコメントをされていた方がいらっしゃいました。
高校でサッカーをしていたのですが、チームメイトが監督陣に向かって、こっそりと似たようなこと言っていたのを聞いたことがあります。
監督が、おそらくモチベーションの維持など何らかの意図をもって、
「お前らは下手くそだ。こんなにグラウンドが整備されていて、よく飛ぶボールやスパイク(サッカー用の靴)が開発されているのに(環境に恵まれているのに)、そんなプレーしかできないのか?」
と言うのですが、それに対して
「監督がやっていた時代って、泥んこサッカーで、オフサイドなんてルールもなかったから、単にボールを前に蹴って走っていただけでしょ。」
といったことを言っていました。
昔の税法六法と今の税法六法
別にサッカーに限った話ではなくて、人間は歳をとると、
「昔は云々で、今は~」
といったことを言いたくなってしまう生き物なのかなと思っています。
調査官でも似たようなことが言われていて、
「最近の調査官はサラリーマン化してしまって、調査能力が落ちてきた。」
といったことが言われていたりします。
この意見について、すべてを否定するつもりはありませんが、
「いや、もう、時代が違うからでしょ~。」
とも思うわけです。
いつも感じているのが、税法六法の厚さなのですが、私が税務大学校の研修生の時は、法令集と通達集で二つの外箱に入るくらいの厚さだったのが、今や、三つになりました。
あとは、図解法人税なんかは、平成初期のものからずらーっと並べてみると、びっくりするくらい厚みが増しているのではないかと思います。
(途中からグループ法人税制などが別冊になっていたりするので、本来は合体して比べて欲しいところです。)
なので、単純に能力云々が落ちたということではなく、対応すべき範囲が劇的に増えてしまったということなのではないのかな?と思います。
昔の会計監査と今の会計監査
会計監査の場でも似たようなことが言われているのを聞いたことがあります。
パートナーの会計士が
「俺らの時代の会計士試験はもっと難しかった。数百人しか合格できなかった。今の会計士たちは、監査がなんたるかをわかっていない。」
みたいなことをたまにおっしゃるわけです。
もちろん、合格者数についてはおっしゃる通りですが、どっちの方が難しかったかと言われると、試験範囲の分量を基準にして比べてみると、今の方が試験範囲の分量は間違いなく多いと思われ、難しいのではないかと思います。
ちなみに、会計監査六法って、辞書のような厚みのB4の大きな書籍なのですが(Amazonの情報によると、2022年版で、3,456頁、寸法は26.2×18.2×8.1cmだそうです。数字だとわかりづらいですね。)、税法六法みたいに、年々、厚みを増しているのでしょうか。
費やした時間の違いなだけのような気がします
過去の世代と今の世代を比べたとしても、実はスキルの面では大きな違いはなくて、どのようなことに時間を費やしたのかの違いなだけなのではないかと思っています。
サッカーでいうと、根性や精神面の訓練には、昔の選手の方が費やされていたのではないかと思われ(筋力を書こうかと思ったのですが、昔よりもより効果的な筋力トレーニングが開発されているように思われ、書くのを止めました。)、今の選手は、テクニックや戦術により多くの時間を費やしているのではないかと思います。
(サッカーを真剣に、そういった観点から見ているわけではないので、単にそう思うくらいですが。)
税務調査でいうと、知っておくべき税法は昔に比べると間違いなく多くなっていますし、企業が行っている取引もどんどん複雑になっていっていますので、それらの理解のためにより多くの時間を費やしているので、人の嘘を見抜くであったり、帳簿や証憑のおかしな点を見抜くスキルを身に着けるために、そこまでの時間を費やしていないということなのではないかと思います。
(そもそも、昔みたく手書きの帳簿や書面はほぼありませんし。)
会計監査も同様で、会計基準は間違いなく複雑になってきていますし、監査手続きで求められる対応が各段に増えてしまっているので、それらに費やす時間が増えてきたということなのではないかと思っています。
とはいえ、ベテランはすごい
なんか、ベテランをディスっているみたいになってしまっているので、やはり経験値があるとすごいなと思わされた経験を書いておきます。
(税務調査)
「ほかには?」の一言で、ほかの多額の不正を把握。
(会計監査)
監査初日の会社からの決算説明のみで、会計処理の誤りを発見。
いずれも、過去に似たような経験があったので、そのように出来たということかもしれませんが、不正経理を暴く、財務諸表を読む、ということに時間を費やしてきたからこそ、なしえる技だと思っています。
時間はみなに平等に与えられたものですので、何に時間を費やすべきか、真剣に向き合いつつ、バランスよく、いろいろなことを経験していきたいと思います。
日々精進。