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【独立開業】お手頃価格で、低品質な申告書

お仕事のはなし

お仕事のご依頼をお断りすると、いろいろと考えてしまいます

今年の3月から自身の事務所を本格的に始めたのですが、これまでに何度かお仕事のご依頼をお断りさせていただきました。

いずれも、悩みに悩んでの決断です。

お仕事のご依頼を頂いたときは、私を頼りにして下さっていることに対してとても嬉しい気持ちになりました。

ただ、その後のやりとりで、ふとした時に、小さなことなのですが、違和感を感じ、その違和感が確信に代わり、それでも、お請けすべきか悩んで、結果としてお断りをしました。
(村上という人物に対してお仕事を依頼してくださっているのではなくて、開業したての若手の税理士だから、安く済みそう、無理がききそう、という観点からのご依頼だとわかったということです。)

丁重にお断りのご連絡を差し上げた後も、

「お断りをしたことが本当に正しい決断だったのか?」

と考えてしまうのですが、それが気になっている間は、とてもストレスを感じてしまいます。

お断りをするに至った経緯を反芻し、自分が高飛車になってしまってはいないかを自問自答し、お断りの仕方は適切であったか、今後、同じような場面に遭遇しないようにするために、どのような対応をすべきかなどを考えていると、ストレスに感じるということです。

従業員の時にはお断りすることを経験していなかった

監査法人でIPO支援をしている時に、明らかにIPOを目指すことのできる状態になっていない会社(IPOのハードルの高さを理解していない。守るべきルールがたくさんあるが、別に守らなくてもIPOできると思っている。経理機能に疑義あり。など)と監査契約を続けることに疑問を抱き、意見をしたことがあるのですが、その時のパートナーの反応が今になって、少しわかるような気がしてきました。

そのクライアントがちゃんとしているかは確かに重要かもしれないけれども、頼りにして下さっているのを無下にするのかということなのかなと思っています。

できるからといってやってしまうのは、みんなにとって良くない

「忙しい人に仕事を頼め」といった言葉をビジネス関連の情報で見ることがあります。

この言葉って、誰かにお仕事を依頼する立場からは間違っていないと思うのですが、依頼を受ける側がこの言葉に従うのは、間違いではないかと思っています。
(断るべきタイミングでは、しっかりとお断りする必要があるのではないでしょうか。)

私は仕事をすぱっと終わらせるタイプです。

たとえば、期限までに10日間ある場合、初日の2日間でほぼコンプリートさせます。

そうしておかないと、何か予想外のことが起きた時に対応が出来ないからです。

だらだらと仕事をすることが、そもそも嫌いだからということもあります。

こういった働き方をしていると、

「村上にお願いすれば、すぱっと終わらせてくれる」

ということがだんだんと知れ渡り、事故事案のようなものの対応や、誰かの尻拭いのような対応の依頼が来るようになります。

ノーマルな案件を余裕を持って終わらせているので、バッファーとして持っていた時間を使うなりして、このような事案の対応をするのですが、適切に対応すればするほど、事故処理係のような状況になっていきます。

初めのうちは、嬉しいんです。頼りにされていることが。

でも、いずれ、限界が来ます。時間は有限ですので。

そして、悲しいことに、依頼する側は、学んでくれません。

「無理なお願いをして申し訳なかったな。」

ではなく、

「なんだ、できんじゃん」

です。

そして、そういった対応が普通になり、他の方にも同じレベル感の仕事を期待し始めます。

このような対応をしていると、私自身が疲弊してしまうということもありますが、それだけではなく、疲弊してしまう環境を他の方にも押し付けてしまいかねないと思っています。

なので、できるからといってやってしまうのは、みんなにとって良くないと考えています。

お手頃価格で、低品質な申告書

期待に応えすぎるとハードルが際限なく上がることについては、所要時間もそうですが、物やサービスの価格にも同じことがいえると思います。

「良いものをお手頃な値段で」は消費者にとってはとても嬉しいことですが、税理士業界を見ていると、ちょっとやり過ぎたのではないかと感じています。

申告書の作成業務がいい例ではないかと思っています。

「決算書の作成や申告書の作成って、そんなに簡単なことでしたっけ?」

と思う訳です。

所要時間にしても、金額にしても。

テクノロジーが進んで、人がやる作業が減ったので、その分、価格が下がったという点については、何の異論もありません。減ったのは「作業」なので。

ただ、申告書の作成が「作業」なのかという点については、少し立ち止まって考えた方が良いのではないかと思っています。

ちなみに申告書の作成業務には、お手頃価格で、低品質が結構あります。
(申告書を「作業」として作成している人達の成果物です。)

税務調査が入ることがない、入ったとしても、手を付けると手間ばかりかかって大変になるということを調査官が経験則でわかり、触らないといった法人の申告書を見ると、びっくりするような誤りが簡単に見つかります。

こういった申告書を量産している人たちが、価格を無駄に押し下げてしまっているような気がしています。

ちゃんとした経理業務や申告書の作成業務をご提供したいと考えているけれども、上記の「お手頃価格で、低品質の価格」を、普通の価格と認識してしまっているお客様がお求めになられる価格と見合わないということで、結局品質を下げざるを得ないとなってしまっていることもあるのではないかと感じています。

せっかく志高く、税理士として働かれているのに、変な流れに流されてしまって、残念だなと思ってしまいます。

税務調査だけを意識した決算書と申告書

さきほどの、「できるからといってやってしまうのは、みんなにとって良くない」に通じるのですが、バリバリ稼働している法人の決算書と申告書を2週間で作ってくださいとお願いされた場合、対応は可能ですが、私はお請けしません。

その業務だけに専念できたとしても、疑問点の質問などのやりとりの時間を踏まえると、ちゃんとした申告書を作成するのが難しいと考えるためです。

税務調査だけを意識して作成して良い、ということであれば、調査官としての経験則で、最低限ここは見るなという点に絞って対応をすることで、対応はできてしまいます。

また、感覚的に、「税務調査に来る可能性が高くないな」と分かれば、さきほどの「お手頃価格で、低品質な申告書」と同じ対応で、申告書を作成してしまうことも可能です。

ただし、これをやってしまうと、「なんだ、できんじゃん」とお客様が勘違いしてしまう可能性が高く、税理士業界にとって良くないことであると考えているので、そのような対応はしないと、事務所の方針として決めています。

私一人があがいたところであまり意味はなく、どこかの税理士さんが受けてしまうかもしれませんが。
(お断りをすることは無申告を許容するに等しいという考えからなのでしょうか。う~ん、難しい。)

日々精進。


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