なぜ税務調査が長期化してしまったのか?
税務調査のご相談を受け、税務調査対応について会社をサポートをさせていただくこととなった場合、まず初めに税務調査において、これまでにどのようなご対応をされたかを必ず確認するようにしています。
ご相談いただく事案が長期化している場合、長期化してしまった理由を把握すべく、過去の対応状況を確認するのですが、その中で会社の方(特に経理部以外の方)の説明の仕方が原因となって、長期化してしまっていると感じることがありました。
会社の方は調査官が業界に精通している(あるいはある程度の業界知識を持っている)と考えられるようで、調査官からの質問の回答の際などに、専門用語の説明や業界慣習などの説明を省略して話してしまう傾向があるように感じています。
でも実際は調査官はそこまで精通していないと思います。
調査官も、わからないと正直に言えればいいのですが、調査官としては理解できていないことを正面切って
「わかりません。。」
ともなかなか言えず、理解できていないままの状況で、自分なりに解釈をしようとします。
しっかりと理解できていないが故に、税務上の取扱いの判断にあたって、無意識に自分が想定したストーリーであったり、課税方向に何らかのバイアスがかかってしまい、その結果、
「この取引は税務上は認められません」
といった指摘をしてしまうことがあるように感じています。
このような状況で、
「なぜ課税になるんですか?」
と聞いたとしても、その理由は無意識のうちにかかっているバイアスですので、調査官自身がそれを自覚していませんので、明確な回答は期待できないと思います。
この状況で必要なことは、こちらから質問をすることで調査官の理解が及んでいない点を把握して、その点を具体的に指摘して、その結果、誤った解釈をしている、または、解釈にバイアスがかかってしまっていることに気付かせることとなります。
(ここが結構しんどいです。何度も何度も同じ説明をすることになります。)
より具体的に言いますと、
「なぜ課税になるんですか?」
ではなくて、
「〇〇という点についてどのように理解されていますか?」
と聞くということをしています。
ちなみに、バイアス以外にも、
「大丈夫です、課税されませんよ」
と回答して、後々の決裁の段階で、審理担当などから課税であると指摘を受けて、
「やっぱり課税でした」
と伝えることになるよりかは、いったんは
「課税ですよ」
という回答をしておいて、審理担当などに確認してから
「課税でないことがわかりました」
と伝える方が、
「課税じゃないって前言ったじゃないですか!!」
という反発を食らうことを避けることができるため、税務調査をスムーズに進めるという観点からも、そのような対応をとりがちなように思っています。
規模感が出てきた会社の税務調査対応
中小企業などで、税務調査に顧問税理士が立ち会っている場合は、顧問税理士が、調査官がどのような点を理解するのに難儀するのかを想像して、随時、質問等の回答の際に補足説明をすることで、このような事態を回避していると思われるのですが、会社規模がある程度大きくなり、経理部員のみで税務調査対応を行っている場合は、なかなかこのような補足をすることが難しいように感じています。
(実際、サポートしていくなかで、具体的な点を挙げつつ、こういった点で補足が必要なんですとお伝えしても、「その点を把握するのが難しいのです。。」という回答をいただきます。国税OBなのでフィーリングで感じとれるのでしょうか??)
税務調査において、質問等の回答をされる際は、(少し言い過ぎかもしれませんが)社会科見学で会社に来た中学生に、会社の事業内容や業界慣習を説明するくらいの気持ちで対応されることをお勧めします。
説明を丁寧に行うことで、税務調査において何らかの不利益が生じることもないと思いますし。
国税調査官は業界に精通しないのか?
ちなみに国税組織には定期異動がありまして、毎年担当職員が入れ替わっているので、国税組織に属しているからといって、ずっと税務調査を担当しているわけではありません。
総務であったり、広報であったりと税務調査以外のいろいろな部署がありまして、そのような部署に異動して、税務調査以外の業務を担当したりしています。
(ちなみに、ある程度その人の過去の経験に沿った人事は行われています(「背番号」))
国税局の調査部であれば、部門と業種を紐づけて管理しているので、同じ部にいる間は、ある程度似通った業種ばかりを調査するようでして、それなりのナレッジを蓄積することができるようなのですが、それでも従業員の方の業界の知識に比べれば、素人に毛が生えたくらいものではないでしょうか。
ちなみに、税務署の場合は、一般的には部門と業種を紐づけて管理していないので、特定の業種のナレッジを蓄積することは難しいと思います。
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日々精進。