瞬間最大風速
最近、少し忙しくなってしまい、ブログの更新が疎かになっていました。
税理士という仕事って、新規のお客様をお受けした際などは、過去のお客様に関する情報の積み重ねがまったくないので、瞬間最大風速がMAXになってしまいます。
このような突発対応をやっていて、楽しいとは感じられるのですが、いろいろな他のことを中断せざるを得なくなるので、
「なかなか考え物な業務だな」
とも思います。
この対応をしているなかで、条文を確認することの認識が、
「税務署勤務時代とだいぶ変わったなぁ」
と思うことがあり、それについて少し書いてみようと思います。
税務署勤務時代
税務大学校の研修では条文を確認する癖がついていましたが、実務となると、業務を予定通りに進めることの方が優先されるので、質疑応答集などの書籍に頼りきりだったように思います。
数年間勤めていると、担当する税目の知識は自然と身についてくるので、難しい質問と簡単な質問の分別が出来るようになってきます。
簡単な質問に対しては、これまでの経験と知識で回答をし、必要に応じて質疑応答集などを確認するくらいで、条文を確認することはありませんでした。
対して、難しい質問の場合は、質問者の方も質疑応答事例などでは判断がつかなかったということでご質問にいらっしゃっていることが多かったので、条文を確認するようにしていました。
つまり、難しい質問を受けた時くらいしか、条文は確認していませんでした。
今思うと、本当にもったいないことをしていたと思います。
あれだけ税金に関する情報と実務に囲まれている環境は他にはないので、もっともっと貪欲に知識や経験を吸収できたような気がします。
根拠を求めてくる人
上記のような状況でしたので、簡単な質問については、条文を確認することなく回答をしていたのですが、稀に、
「根拠はどの条文ですか?」
と聞いてくる方がいらっしゃいました。
当時は、
「ずいぶんと真面目な方なんだなぁ~(税法マニアの税理士さんかな?)。」
くらいにしか思っていなかったのですが、税務署に勤めていた頃も、辞めた後も、
「やっぱり、自分で条文を確認することって大切なんだな。」
と思わされる機会がたくさんあり、今になって思うと、単に真面目なのではなく、しっかりと適切な対応をされている方だったんだなと思います。
税務署に完全に依拠するのは危ない
国税組織は公務員の中でも特にしっかりとしている組織と言われているそうです(ニュアンスはこんな感じのことだったと記憶しているのですが、正しい表現は忘れてしまいました)。
なので、税務調査にお邪魔した際に、いろいろな会社の情報をお話していただけますし、資料を拝見することもできます。
質問に対する回答も同じで、よく、
「税務署さんが言っているんだから大丈夫でしょ。」
ということを聞きますし、実務の多くの運用もこれで成り立っているのだと思っています。
とはいえ、税務職員も人間です。
機械のように完璧であり続けることなど、到底できません。
年々、複雑怪奇になっていく税法を取り扱っているわけですから、稀に間違うこともあります。
税務署が窓口などで誤指導をしてしまった場合であっても、一義的には納税者が自主申告したものであるため、救済されることは基本的にはなく、せいぜい、加算税の取り扱いで幾ばくかの対応をしてくれるくらいなのかなと思っています。
「税務署さんが言っているんだから大丈夫でしょ。」
と税務職員を信じ切って、税務業務をしていたところ、結果として、間違いとなり、余計な税額が生じてしまったという事案を、国税の外に出てから見たことがあります。
ある程度の実務的な対応ができるのは上記のとおり、せいぜい加算税などくらいですので、本税はどうにもなりません。
本税についてもどうにかしようとして、審査請求や訴訟に進んでしまった場合は、
「条文をそのまま読むと、課税が然るべき」
という結論となってしまうと思っていた方が良いように思っています。
申告書を作成するにあたっても、条文や公的機関の情報を確認するようにしています
そういったこともあり、申告書を作成するにあたっても、事業年度はいつになるのか、中小企業の判定はどの時点でどうやってするのか、概況書のフォーマットって調査部所管と税務署所管で違うが、その根拠は?などといった風に、原典をあたらないと怖いなと感じるようになりました。
新しい制度の場合は、国税庁や他省庁が公表しているリーフレットを参考にしたりもしますが、それが絶対に間違っていない保証はどこにもないので、リーフレットは制度の大まかな理解と、しっかりと制度を理解した後の見直し用として使用するにとどめて、根拠条文や財務省が公表している税制改正の解説を確認するようにしています。
(財務省 税制改正の解説)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/index.html
租税特別措置法などは一つの条文が恐ろしいほどに長かったりするので、いちいち調べていると、とてつもない時間を要してしまうのですが、リーフレットの情報や国税庁の解説だけを見ても、情報が端折られていることもよくあり、それだけに依拠するのはとてつもなく恐ろしいことだと感じるようになり、条文を確認するようになりました。
とはいえ、たくさんの実務を回されている税理士さんの多くは、条文はそこまで確認せずに、質疑応答集などを参考にされているのではないかと思っています。
その実際のところも、肌感覚として持っているので、
「条文を細かく見過ぎかな、、、」
なんて、考えてしまうのですが、じゃあ、条文を確認していれば防げたようなミスが生じた場合に、後悔しないかというと、絶対にすると思うので、
「では、条文を確認だ。」
となります。
一人で黙々と条文と向き合っているので、税務の専門家以外の方からすると、
「何をそんなに調べているのだ?」
と思われるかもしれませんが、あるべき対応はやはり、こうやってチクチクと条文を確認することなのだと思います。
大変ですが、付箋とマーカーでいっぱいになった税法六法を見ると、少し満足出来たりもします。
同じことを調べるときに記憶も喚起しやすいですし。
税法オタクの戯言でした。
日々精進。