プロの仕事はやっぱりすごい
現在、「税経通信」という月刊誌で、税務調査に関する記事を連載しています。
連載を続けるにあたっては、毎回、方向性の確認などを編集部長様にさせていただいているのですが、プロの仕事ってやっぱりすごいなと思う機会があり、それについて書いてみようと思います。
こうやって執筆をしています
連載は、私が国税調査官として税務調査をしていた頃に思っていたことや感じたこと、会計士・税理士になってから、思ったことや感じたことを内容としており、税務調査の大きな流れに沿って、自身の経験に基づいて書いています。
出来る限り、中立に、納税者の側にも、税務署の側にも寄りすぎることのないように、俯瞰的に税務調査の現場を見ているイメージで書くようにしています。
連載の内容はすべて自身の経験に基づいて書いているのですが、手許には一切、当時の記録はありません。
なので、記事を書くにあたっては、当時のことをできる限り思い出す必要があります。
何気なく外を歩いている時など、思いがけないタイミングで思い出すことが多いので、Google keep というアプリに、たとえ些細なことであっても思い出す都度、メモを残すようにしています。
そして、そのメモに沿って書いていると、当時の記憶を数珠つなぎのようにポコポコと思い出すことができ、連載を書ける程度の内容は思い出すことができます。
もちろん、それだけでは紙面を拝借してご提供する情報としては物足りませんので、税務調査に関連する書籍を読んでみたりして、意識的に思い出すきっかけを作っています。
だんだんわからなくなります
連載のドラフトを作成するにあたっては、まず初めに、だだだっと、「てにをは」や、文章の流れや、読みやすさをいったん無視して、誰かに話しているようにして、叩き台を作成しています
次に、その叩き台を読んで、分かりにくいと感じたことをより詳細に説明したり、「てにをは」を直したり、文章の流れが悪くなっている箇所を修正したりします。
この段階では中立に書けているのかはあまり意識していません。
なので、攻撃的な内容になってしまっていたり、調査官寄りの意見となってしまっている箇所があります。
数日置くと、熱も冷めて、冷静になって文章を読むことができるので、それから、攻撃的な内容や、偏った意見になっている箇所を削除したり、修正したりします。
そして、これらを終えた段階で、ドラフトを編集部長様にお送りして、アドバイスをいただくようにしています。
この段階のドラフトは、冗長な表現や四方山話が多いですし、誰のために書いているのかちゃんと意識できていない文章がたくさん残っています。
文字数も、6,000字が一回の連載の目安のところ、9,000字くらい書いてしまっているような状況です。
ただし、雑な段階でアドバイスを求めているというわけではありません。
読み返しては修正をして、を何度何度も繰り返して、自分の文章を客観的に読めなくなったという段階に至ってからアドバイスを求めるようにしています。
壁打ちの相手
出口のない迷路に迷い込んでしまっている村上が、取り留めもない質問と共にアドバイスを求めてくるわけですが、編集部長様の返しがいつも見事でとても助けられています。
ドラフトを読んでのご感想をいただけるのですが、いただいた感想を読んでいると、出口が見つからなくて困っていた状態から、いつの間にか、出口がぱーっと見えてきます。
まだ、きれいにその形を掴みきれていないのですが、感想を述べられているだけではなくて、「こっちだよ~」と道案内をしてくださっているような感じです。
どういったトーンで書くべきか、そもそも書く必要があるのか?であったり、言いっぱなしになっている箇所(より具体的な事例を思い出せていない状況になってしまっている箇所)などについて、アドバイスをしてくださいます。
それだけでも大変ありがたいのですが、メールの文章という限られたコミュニケーション手段で、当時の私の記憶を引き出してくださる点にいつも驚かされています。
編集者のプロの方って、書き手に自由に書かせつつ、うまーく、軌道修正だったり、道を示すことができる方のことをいうのかな、なんて考えています。
村上の壁打ちの相手になってくださっているのかなと思っています。
これまでの職場を振り返ってみると、村上が壁打ちの相手でした
「一人で黙々と仕事をしているだけでは、アイデアが求められる仕事は難しいなぁ。」
なんて思ったりしているわけなのですが、ふと、これまでの職場(プロフェッショナルファーム)を振り返ってみると、村上を壁打ちの相手にされていた方がいらっしゃったということを思い出しました。
(ネットでさっと調べてみたところ、「壁打ちの相手」には、知識や経験が少ない後輩を個別にサポートする指導者のことも意味するようなのですが、ここではそういった上下の関係は意味していません。)
ふらっと、私のところにいらっしゃって、質問をされたかと思うと、自分の考えを説明し始め、2~3簡単な質問や回答を繰り返すと、どうやら、頭の中が整理されたようで、満足そうに去っていかれたり、
「やっぱりわからないなぁ~」
と言うリアクションをしつつ、去って行かれたりします。
当時は、
「いったい、何が起きたのだ?」
という感じだったわけですが、今になって思うと、
「村上を壁打ちの相手とされていたんだな~」
と気づけました。
壁打ちの相手として村上を起用いただく
今は、お客様の壁打ちの相手をすることが多くなりました。
まっさらな状態でのご質問と、ある程度ご自身でお調べになられてのご質問は、質問のトーンなどでわかるのですが、いろいろとお答えした後で、
「あぁ、さっきのは、壁打ちの相手だったのね」
とわかります。
会議への出席依頼と、その場でのディスカッションも、同様に壁打ちの相手として起用されているのだと考えています。
この場合は、5~6人など、複数人の方の壁打ちの相手を同時に行うこととなるのですが、複数人を同時に相手する方が、議論が盛り上がることが多いので、かなり好きです。
質問の内容も、質問者の経験値や知識量、役職などの影響を受けるので、その方に合わせた回答の仕方を選んで回答するようにしています。
一対一の壁打ちの相手ですと、ボールが返ってくるまで時間が少しかかりますが、複数人だと、その待ち時間が短くなりますので、瞬発力が求められるのですが、それにわくわく感を覚えます。
会計士や税理士として働いていると、「〇〇制度についてご教示ください」といった、知識提供型の業務がどうしても多くなってしまうのですが、先に述べた何気ない問い合わせや、会議への出席といった壁打ちの相手としての起用も、今後増やしていけたらいいなと思っています。
会議が終わったあとは、個人的には満足感に満ち溢れているのですが、これが単なる自己満足ではないことを願います。
(というか、気を付けます。)
日々精進。