「経理になった君たちへ」を読んで
公認会計士YouTuberのくろい氏が書かれた本でして、少し前に、会計士の中で賑わっていましたので、購入して読んでみました。
経理関係の読み物というと固い内容のものが多いのですが、この本の内容は非常に読みやすく、かつ、ご自身のご経験を基に書かれていらっしゃったので、とても楽しく読むことが出来ました。
第1章から第6章まであり、
「非上場会社/会計事務所委託編」
→「非上場会社/単体経理編」
→「非上場会社/大会社編」
→「非上場会社/子会社編」
→「上場企業/親会社編」
という流れで、章が進むごとに、会社がランクアップしていきます。
この本を読んだときは、経理部の役割を網羅的に書くために、会社のランクごとに章立てされたのかなと思っていたのですが、最近、実務で、似たような状況を見る機会があり、実際に起こりうる場面だからなんだと気づくことができました。
これについて少し書いてみようと思います。
税法決算と会社法決算の違い
私が最近目にしたのは、「非上場会社/会計事務所委託編」から「非上場会社/子会社編」へ、いっきにジャンプした事例です。
非上場会社で会計事務所へ委託をしている場合は、一般的には税法決算で決算書が作成されています。
なので、引当金などの見積もり項目は一切計上されていませんし、損益についても発生主義になっているかというと、そうでもないケースがたくさんあると思います(税務は、益金は早く認識し、損金は遅く認識します)。
自社に経理の方がいらっしゃったとしても、ご自身で決算を組んで、税金計算までコンプリートするのは難しいという状況です。
かたや、会社法決算となると、引当金などの見積もり項目の設定は必須ですし、損益も発生主義によることが求められます。
会計処理が税法のルールに必ずしも沿っているわけでありませんので、引当金の調整など、別表調整も税法決算の頃に比べるとてんこ盛りになります。
年一回の決算から、月次・四半期決算へ
上記はテクニック的な話なので、慣れれば大したことではないと思うのですが、年間の決算スケジュールが大きく変わりますので、この変化への対応が大変なのではないかと思っています。
税法決算は、極端な言い方をすれば、年間を通して、所得計算が正しくされていればそれで良いので、月次決算や四半期決算はほとんどの会社が行っていないと思いますし、年度決算にしても、決算月から2か月後の申告期限に間に合うように作業をしていると思います。
上場企業の子会社になった場合は、上場企業のスケジュールに沿って、経理業務を行う必要があるので、月次決算(翌月の第2週くらいには数値を固めて報告など)が求められます。
四半期・年度末決算については、連結会計や、45日ルールを意識したスケジュールで決算を終わらせて親会社に報告をする必要がありますので、決算月から2か月後までといったのんびりした対応ではNGとなってしまいます。
上場企業を目指す場合は、少しずつステップアップしていける
買収だと一気に変わる必要があるのですが、上場準備企業の経理の場合は少しずつステップアップしていくことができます。
監査法人在籍時に上場準備企業のIPO支援を経験しましたが、まずは、会社法決算に財務諸表の数値を修正して、それから、引当金の計上や、発生主義の考え方など、一つ一つ論点を潰していき、N-1期にトライアルとして、はじめて四半期決算とその会計監査対応を行う(たしか、N期ではなかったと思います)ので、上場を目指し始めてから、数年間かけて、上場企業で求められるスケジュール感での決算に持っていければ良いわけです。
(もちろん、時間があるとはいえ、そのほかもいろいろと大変だということは理解しております。)
上場準備企業の経理の場合は、心の準備だったり、いろいろな学びにかける時間があるわけですが、買収の場合は、心の準備がないまま、
「親会社が上場企業になったから、対応が必要ですよ。」
といきなり言われてしまう訳で、
「そもそも何から対応すればいいのやら、、」
という状況になってしまうのではないかと思います。
「顧問税理士にサポートをお願いすればいいのでは?」
と思われるかもしれませんが、理由はわかりませんが、税法決算がNGになったタイミングで顧問を降りられる税理士さんが割といらっしゃるように感じています。
(監査法人在籍時に何度か目にしました。)
こういった会社のサポートをしたい
会計と税務がごちゃまぜになってしまっているところを、きれいにしていくことが好きで、いろいろと経験をしてきました。
これまで気づけていなかったのですが、買収されて上場企業の子会社になるタイミングも、まさにごちゃまぜになってしまうタイミングなように思っています。
(上場を目指す場面以外にもあるんですね。)
なので、こういった会社のサポートを考えるとわくわくするのですが、上場を目指している会社と違って、モチベーションが低い(追加の仕事が増えてめんどくさい、できればやりたくないなど)などの可能性もあり、実際にサポートしてみると、いろいろと難儀するのだろうとは思います。
とはいえ、何事も経験ですし、それで私の知識と経験が世の中で役に立つのであれば、喜んでお請けしたいと考えています。
日々精進。