裁決事例
令和4年6月2日裁決の事例は、合資会社の無限責任社員が死亡退職したことに伴い発生した、持分払戻請求権にかかる税金に関するものです。
(令和4年6月2日裁決)| 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)
持分会社の社員(株式会社でいうところの株主)が退職した場合は、定款に承継に関する規定がないと、持分の払戻請求権を取得することとなるのですが、その請求権の評価額が出資額を上回る場合、その上回る部分が所得税法上、みなし配当として課税されるとのことです。
遺産分割協議により持分払戻請求権を取得した相続人の所得税確定申告に、この、みなし配当が反映されていなかったため、更正処分を受け、それに対して、払戻額は零円として確定していることから、みなし配当は認められないとして審査請求をしていた事例です。
裁決では、更正処分を適法としています。
事案の概要
裁決書(抄)による概要は下記のとおりです。
- 昭和25年2月に設立された合資会社の、無限責任社員が死去したことによって生じた持分払戻請求権に関する事案。
- 合資会社の定款には、社員が死亡した場合に当該社員の相続人が当該社員の持分を承継する旨の定め及びその場合の持分の払戻しに関する定めも、社員の退社による持分の払戻しの計算方法に関する定めもなかった。
- 平成28年10月に当該社員が死去。
- 平成29年1月28日付で、共同相続人は、本件合資会社の唯一の社員として、持分払戻請求権の払戻し金額を零円とすることに同意する旨を記載した「同意書」を作成。
- 平成29年7月16日付で、共同相続人は遺産分割協議を行い、共同相続人が各5分の1を取得する旨を記載した遺産分割協議書を作成。
- 令和元年8月9日に、持分払戻請求権の取得による、みなし配当が、所得税確定申告に反映されていないとして更正処分。
- 令和元年11月6日に再調査の請求をするも、令和2年1月29日付で棄却。
- 令和2年2月26日に審査請求。
あまり勘所がないので、発見がある
つらつらと公表裁決事例を読んでいて気になった事案だったので、取り上げていますが、普段仕事で取り扱っていない所得税(財産評価通達関連ですので、資産税?)に関する事案ですので、読んでいて、いろいろと勉強になります。
まず、持分会社は、社員の死亡等による退社時に、
- その持分を相続人などが承継する(会社法608条)
- 持分の払戻しを受ける(会社法611条)
のいずれによるかが、定款の取り決めで決まるようです。
そして、
- 持分を承継する場合:取引相場のない株式の評価方法に準じて出資の価額を評価
- 持分の払戻しを受ける場合:時価純資産価額(財産評価通達の定めにより評価した金額)で出資の価額を評価
をするようです。
持分会社の退社時の出資の評価|国税庁 (nta.go.jp)
正直に申し上げますと、この2つの評価方法の違いをしっかりと理解できていないのですが、おそらく一般的には、前者の方が評価額が低く算出されるのだと思われます。
ただし、事案の内容を見るに、どっちで評価すべきかについて争われたのではなく、
「何で一銭ももらっていないのに税金を払うんじゃい。」
という事案のように思われます。
これについては、権利確定主義と言って、価値があるものを得たのであれば、実際にお金が入ってきていなくても、その時点で課税の対象としますよという考え方により、課税されると裁決されています。
(売掛金の段階で所得に含まれるのと同じ考えですね。本件については、払戻し金額を零円として合意しているので、ややこしくなってしまっていますが。)
持分会社って意外とある
会社というと、まっさきに思いつくのが株式会社ですが、それ以外にも、合資会社、合名会社、合同会社といったいろいろな会社の形態があります。
株式会社がでっかい会社をイメージして、その他は、こじんまりとしているイメージが昔はあったのですが、今は、そういったイメージも和らぎ、設立コストなどの関係から、合同会社を設立することも増えてきているように思っています。
これは、勝手なイメージでしかないのですが、お菓子屋さん(特に和菓子屋さん)というと、なぜか、合資会社のイメージがあります。
たとえば、上野にある、どらやきのうさぎ屋さんは合資会社です。
ちなみに、新橋にある切腹最中のお店は株式会社でした。
(合資だったようなと思って検索したら違いました。)
切腹最中 | 御菓子司 新正堂 (shinshodoh.co.jp)
と、締めくくりは都内で有名な和菓子屋さんを紹介してみました。
不慣れな税目について書くのは難しいですね。
日々精進。