令和4年9月9日裁決
裁決事例を見ていて、最近よく目にするようになったなという論点がありましたので、少し書いてみようと思います。
(令和4年9月9日裁決)| 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)
事案の内容をざっくりと説明すると、賃貸用の土地及び建物を一括で購入した場合に、売買契約書に記載された土地建物の金額で土地と建物の取得価額を算定すべきか、もしくは、その金額が著しく不合理であるため、固定資産税評価額の価格比に基づいて取得価額を算定すべきかが争われた事案です。
本件では、固定資産税評価額の価額比に基づいて算定すべきと裁決されています。
あらかじめ決めた割合で算定していた?
裁決書(抄)に記載されていた、売買契約書の金額等は下記のとおりです。
契約締結日 | 総額 | 土地価額 | 割合 | 建物価額 | 割合 | 築年数 |
H28.7.15 | ¥305,000,000 | ¥91,500,000 | 30% | ¥213,500,000 | 70% | 27年 |
H29.9.17 | ¥31,000,000 | ¥9,300,000 | 30% | ¥21,700,000 | 70% | 40年 |
H29.12.25 | ¥19,500,000 | ¥5,850,000 | 30% | ¥13,650,000 | 70% | 38年 |
原処分庁の主張にもありますが、築年数等にかかわらず、一律3対7で按分していたようです。
たしかに築年数に比して、建物価格が高い様にも思えます。
(内容を見るにリノベ物件などでもなさそうです。老朽化していたとあったので。)
売り主にも反面調査をしたようで、売り主としては販売総額を重視しており、内訳は特に気にしていなかった旨などが認定されていました。
これはよく聞く話ですね。
業者間ですと、消費税の金額などに影響するので、内訳も気にしますが、個人の場合は消費税が関係ないので内訳を気にする必要がないわけです。
確かに一律の割合を使用している事例はありますが
個人事業主の方ですので、法人として行っている場合に比べると、そこまで購入している物件数が多いということはないように思われ、それを踏まえると、なぜに一律の割合で按分していたんだろう?という疑問に行きつくのではないかと思われます。
法人で手広く仕入れている場合には、一件一件精査するのも難しいということもあり、一律で按分しているケースもありますが、それでも、その割合は、過去の固定資産税評価額の実績値を集めて算定し、適宜見直しをして使用しているという理解です。
もちろん、個々の物件の状況やエリア、取引の時期の影響も受けると思いますが、どちらかというと、建物3:土地7の方がしっくりきます。
請求人の主張を確認したところ、売買契約書に記載された金額はあらゆる交渉を行った結果の産物であり、合理的な価額といえると主張しているものの、3:7が合理的であることは主張していないようでした。
私が審判官だったら、まっさきにこの3:7の根拠を質問すると思いますので、おそらくこの事案の担当審判官も質問をしたのだと思われるのですが、裁決書には特に書かれていませんでした。
どうやって、この割合決めたのでしょうか。
昔からある悩ましい論点
ここ数年くらいですが、この一括で仕入れた場合の按分についての話を耳にする機会が増えたように思います。
本件は所得税の事案ですが、消費税でも同様の論点があります。
そちらは、現在訴訟になっており、その後の経過を追えておりませんが、昔のように、あんまりにも目に余る計算じゃなかったら、税務署も文句を言わないだろうという考えで、なんとかなる時代ではなくなってきているのかもしれません。
日々精進。