事案の概要
日本ガイシが移転価格税制にかかる税務訴訟で、58億円の還付を受けることが確定したとのことです。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/5333/tdnet/2099084/00.pdf
米国とポーランドの海外子会社が自動車用排ガス浄化装置の部品を製造する際、技術料を日本ガイシに支払っていたが、適正価格より安価にして同社の所得を海外子会社に移したとして、2010年3月期までの5年間で、約160億円の申告漏れを名古屋国税局が指摘した事案のようです。
訴訟に要した期間
金額も大きいですが、かかった期間が個人的に興味があります。
追徴課税に関する新聞記事が2012年5月9日付けでしたので、国税不服審判所→東京地裁→東京高裁という流れで、ほぼ10年間かかったこととなります。
時系列は下記の通りでした(SD:「移転価格税制に基づく更正処分等の取消訴訟に係る控訴審判決の確定に関するお知らせ」)。
更正処分:2012年3月
審査請求:2014年8月
審判所裁決:2016年6月(一部取り消し)
訴訟の提起:2016年12月
原審判決:2020年11月(請求を概ね認容)
国控訴:2020年12月
控訴審判決:2022年3月10日(期限までに上告及び上告受理申立てがされず確定)
高裁で確定していますが、上告して最高裁までいっていたら、あと何年かかったのでしょうか?
追徴期間が「2010年3月期まで」とのことですので、税務調査の着手は早くて、2010年7月から秋口にかけてかと思われます。
そこから丸一年以上かけて税務調査が行われて、更正処分。
更正処分から審査請求までの期間が、なぜか結構ありますが(不服申立期間は「原処分の通知を受けた日の翌日から3カ月以内」です。)、審判所はほぼ標準処理期間の1年で裁決を出しています。
地裁でほぼ4年間かかっており、高裁ではおそらく一回結審(納税者は、国の主張書面を見て、一般的に反論したいと思うであろうということで、1回は反論はしたんですかね。)で、1年ちょっとで控訴審判決となっています。
長いですね。
税務訴訟は、口頭弁論がおおむね3カ月間隔で開催されるので、あっという間に1年過ぎてしまいますが、それでも4年間もかかるなんて、、と思ってしまいます。
期間以外で気になったのですが、ざっくりと公表情報を調べた限りでは、日本ガイシは相互協議の申立てをしていないようです。
相互協議を行ったからといって、必ずしも二重課税が解消されるわけではないのと、訴訟と同じように期間を要するので行わなかったのか、それとも、国税側の指摘内容を見て、日本側で取り返す(訴訟で勝つ)のが、より妥当と判断してだったのか、その判断の経緯が気になります。
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日々精進。