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【会計】株式会社ダイイチの第三者委員会の調査報告書を読んで

会計監査のはなし

調査報告書の主な内容

株式会社ダイイチ(北海道を拠点として、スーパーを運営)において、第三者委員会が設置され、2022年6月24日付で調査報告書が公表されています。

https://www.daiichi-d.co.jp/sys/wp-content/uploads/b1f071f237cb90ee687dcbefb28bbc7a.pdf

委員会設置の経緯は、札幌国税局の税務調査とのことで、利益調整を目的とした売上原価の先行計上と経費の先行計上(こちらは会計のみ)が行われていたとのことでした。

売上原価の先行計上

翌期に仕入れる予定の商品を、当期中に仕入れたこととしつつ、実地棚卸高から除外することで、翌期商品が売れた際に売上原価が0円とすることを行っていたとのことでした。

報告書を読んでいて、下記が気になりました。

・粗利率の変動が異常性を示していなかったのか?

・期中に納品を受けていないのにどうやって仕入れ計上するのか?

・どうやって実地棚卸高から除外するのか?

粗利率の変動が異常性を示していなかったのか?

年間売上高が440億円に対して、先行計上による純額の利益増加額が数千万円だったので、損益計算書ベースでは粗利はそこまで変動しなかったのではないかと思われます。
(有報と四半報見ればわかるのですが、すみません。)

月次で決算数値を並べて、KPIの数値の推移などを見れば、にょきっと数値が伸びたり、ぐんと減ったりしている月も出てきそうにも思いますが、そういった観点からの報告はなかったので、他の正常な取引に埋没していたのかもしれません。

期中に納品を受けていないのにどうやって仕入れ計上するのか?

これについては、報告書内に記載がありました。

「商品が店舗に到着した際に、店舗担当者は、個別検品は行わない。経理部は、EDIに登録された納品伝票のデータフォーマット上のエラーの有無のみを確認し、問題なければ、検品(受入)処理を行う」

とのことでした。

個別検品は行わないとありますが、どうやって在庫の管理をしていたのかが気になります。

生鮮食品などは、一定時期が過ぎると廃棄してしまうため、個別管理は必ずしも必要ないということなのでしょうか(小売業の会計監査をしたことがないので勘所がありません)。

廃棄ロスはどうやって把握するのでしょうか?

店舗の従業員が「今晩の夕飯に使いましょう」といって、勝手に商品を持ち帰ってしまった場合にちゃんと把握できるのでしょうか?

昔、コンビニでアルバイトをしたことがあるのですが、箱単位でバーコードを読み込んで検品していました。

廃棄は捨てる前に商品ごとにバーコードをピッします。

これって営業上必要なので普通に行われていることなのかなと勝手に思っていたのですが、個別検品をやっていないお店もあるんですね。

どうやって実地棚卸高から除外するのか?

「理論在庫調整数量申請書」というものを経理部に提出することで、理論在庫を減少させる棚卸修正処理を行うことができたようで、経理部はこの申請内容を吟味することなく、処理していたとのことです。

一部の対象商品については、9月中に納品されるものもあったようで、その場合は、店舗の担当者に実地棚卸から除外するように指示していたとのことでした。

一つ目の行為により、理論上在庫として存在している在庫が店舗の実地棚卸時に把握されないという事態を防ぎ、二つ目の行為で、理論上在庫として存在していない在庫が店舗の実施棚卸時に把握されるという事態を防いでいたということのようです。

経費の先行計上

資材の購入を先行計上し、全額を会計上費用処理していたとのことでした。

9月末までに納品されるものもあれば、それ以降に納品されるものもあったようです。

珍しい記述だなと思ったのが、税務上は貯蔵品又は前払費用として別表調整(所得に加算)をしていたという点です。

会計監査でも申告書をチェックするのですが(未払法人税等や税効果会計の検証のためです)、監査チームの担当者が、別表4で加算処理されているのを見て、

「あっ、やべ、会計も直さなきゃ」

とならなかったのか気になります。

費用計上額の検証という観点については、会計監査では金額的重要性の観点から検証対象に含まれていなかったとのことです。

いろいろと考えさせられます

多店舗小売りで棚卸資産の調整というと、中小企業の税務調査では、割とよくお目にかかるトピックですので、変に慣れてしまっていますが、上場企業で行われていたという情報を聞くと、なんだかなぁと思ってしまいます。

先行計上額も純額では増えたり減ったりしていますが、総額では増加していっていますので(報告書10頁)、このまま続けていたら、どれだけ膨らんでいたのだろうと考えてしまいます。

第三者委員会の設置自体が増えてきているとは思いますが、設置の経緯を見てみると、意外と税務調査がきっかけとなっていることが多いように思っています。

報告書をつぶさに読んだわけでもないような状態で書いていますので、誤った理解などもあるかもしれません。悪しからず。

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