久々に見た表示誤り
上場企業などの会計監査を受ける会社の場合、勘定科目が正しく表示されているかという観点からのチェックも受けます。
税効果会計の改正前の、繰延税金資産の流動固定分類(改正後は全部固定に計上)など、あるあるの表示誤りはほかにもあるのですが、ひさびさに見た表示誤りについて少し書いてみようと思います。
「短期借入金」と「一年内返済予定の長期借入金」
「長期借入金」のうち、期末日から一年以内に返済期日が到来する部分を「一年内返済予定の長期借入金」と一般的には表記するのですが、これを間違って「短期借入金」と表記する誤りがあります。
「短期借入金」自体あまり見かけないので、開示書類に「短期借入金」があると、もしや間違っているのではないかと必ず気になります。
グループ間の運転資金の貸借の場合に、「短期借入金」が生じることがありますが、金融機関などからの借り入れで「短期借入金」はあまり目にする機会がないように思います。
(会計監査を受けている会社においてですので、中小企業だと状況が違うかもしれませんので、悪しからず。)
「短期借入金」とは
「短期借入金」とは、返済期限が1年以内に設定された借入金のことをいいます。
「財務諸表等規則や企業会計原則に定義があるかなぁ~」と調べてみたのですが、意外にも、定義の規定が見つかりませんでした(昔、どこかで見たような気もするのですが、、)。
少し驚いたのですが、「短期借入金とは、期末日から返済期日が一年以内に到来するもの」という説明がネットに結構ありました。
(大きくは外していないとは思うのですが、この説明で、「一年内返済予定の長期借入金」と「短期借入金」との違いを示すことできますかね??財規ガイドラインの47-6の3は「一年内返済予定の長期借入金」についてのことを言っていると思うのですが。)
https://www.fsa.go.jp/common/law/kaiji/04.pdf
ネットで質問している人が大変そうでした
この論点、いろいろな方が気にされているようで、ネット上で質問をされている方が結構いらっしゃいました。
回答されている人が、会計士なのか、税理士なのか、経理部の方なのか、はたまた簿記を勉強したことがある人なのかで、回答に色が出ており、読んでいて楽しむことができました。
税法のように定義が明確になっていれば、皆さんそれを引用されるので、ある程度同じ回答に収斂していくのではないかと思いますが、定義がない(私が見つけられなかっただけかもしれませんが。)ことと、重要性の観点から、全額を固定負債に記載することができるといった取り扱いもあることから、人によって言っていることが違うみたいに見える状況になっているようでした。
質問者の方、余計にこんがらがってしまったのではないかと少し気になっています。
やはり、ネットで答え探しには限界があるように思います。
手間がかかりますが、原典にあたることの大切さを再認識できたように思います。
日々精進。
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