コラム

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株式譲渡の認識のタイミング

会計のはなし

会計基準の構成

会計基準を普段から使われるお仕事をされている方ならご存知かもしれないが、会計基準には会計処理に関する規定が書いてある部分と、「結論の背景」として、なぜそのような会計処理をすることにしたのかの検討過程や、他の会計処理が採用されなかった理由等が記載されている部分がある。

会計処理を検討をする際は、「会計処理に関する規定」の部分⇒「結論の背景」という流れで検討を行うようにしているのだが、「結論の背景」の部分の存在が気づきにくい構成になっているからか、「会計処理に関する規定」の部分のみをご覧になられて、どのような会計処理をすべきか疑問を持たれた方からご質問をいただくことがある。

確かに、監査法人に転職して1年間くらいは、この基準の構成にとても違和感があった。

「会計処理に関する規定」の部分には、複数の処理例が規定されていることがよくあり、この部分だけを見て、いざ実例に当てはめようとすると「どちらの会計処理でもOK」と規定されているように見えてしまうためである。

この点、慣れてくると案外便利で、どういう規定だったかなという時には割とささっと調べることができ、判断に迷ったときに、会計基準ができた背景事情などを確認して、会計処理を判断することができる。
(この点、税務の場合は、税法→税法通達→税法通達の逐条解説→コンメンタールといった流れで複数の書籍などを確認する必要がある。)

株式譲渡の認識のタイミング

株式譲渡の認識タイミングはいつか?という質問をよく受けるのであるが、会計基準では株式譲渡の認識タイミングについて、約定日基準を原則とし、修正受渡日基準というものも認めている。

では、株式の売買契約は締結済みであるが、売買代金の決済が未了である場合において、約定日基準で株式の譲渡を認識することができるのか?

会計基準を四角四面に読めば、約定日基準が原則であるため、売買契約を締結した日で譲渡を認識すべきとなるようにも思えるが、株式の譲渡は、売買契約書の締結と売買代金の決済は同時に行われるのが一般的であるという理解で、その理解に基づいて、売買代金が未決済であるといったことに着目すると、売買契約書の締結時点ではなく、売買代金が決済されたタイミングで株式の譲渡を認識すべきという判断になるのではないかと思っている(※)。

※「一般的ではないことが行われている=何か別の目的がある=株式の譲渡により多額の売却益が計上されるため、これを今期の決算に取り組みたいという思惑があるのではないか?」という思考過程を経たうえで、上記のような判断となっているため、おしなべて同様の判断になると考えているわけではない。約定日基準を採用した背景などは「金融商品会計に関する実務指針」の有価証券の売買契約の認識(231項~236項)にて説明されているので、これを読むと、どのような状況を想定して約定日基準を原則としているのかを知ることができる。

金融商品会計基準の規定

ちなみに株式譲渡の認識のタイミングを規定している金融商品会計基準について、当該基準と併せて、当該基準の作成に携わった会計士の先生方の書籍等を読んでみたところ、下記のような整理となるようである。

  • 金融商品の認識・消滅
    引き渡しの日。
  • 有価証券の認識・消滅
    原則は約定日基準。
    簡便法として修正受渡日基準。
    通常の引渡期間ではない取引は、金融商品の認識・消滅の取扱いと同じ。

「通常の引渡期間でない取引」については、未公開企業の株式の譲渡も含まれるというファームポリシーを持っている監査法人もあるようで、一般的な株式譲渡は未公開企業の株式であると考えられることからすると、原則とされている約定日基準によって株式譲渡を認識することができる事例はあまりないのではないかと思われる。

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