コラム

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テナント側のフリーレントの取り扱い

会計のはなし

テナント側のフリーレントの処理について、否認されたという事例を聞くことが増えた。

会計上は、フリーレント期間の賃料の免除を賃貸期間全体にかかる値引きと考えて処理する。
たとえば賃貸開始後3か月間賃料が無料であったとしても、賃料総額を賃貸期間で按分した金額を毎期費用処理することとなる。

当該会計処理について、税務上も認められるのかという議論が数年前にあったのだが、税務関係の専門誌で以下のような解説がされていた。

フリーレントは実質的に「賃料の免除又は値引き」といえるため,会計上フリーレント期間に対応する賃料相当額を収益計上していない場合には,税務上も認容されることが明らかとなった。他方で,賃料総額をフリーレント期間を含む賃貸期間で按分した金額が月額賃料であると認識し,按分後の賃料を収益計上している場合には,税務上も益金の額として所得計算をすることになる。

また、同誌において、テナント側の処理について以下のような解説がされていた。

賃貸料を支払うテナント側の税務上の処理については,契約において賃貸契約期間中に支払うべき“債務が確定”していることが明確となっている場合には,総賃料を賃貸期間で按分した金額を費用として計上することができることも考えられよう。
つまり,賃貸人や賃借人の収益・費用の計上金額等については,契約の内容やその契約を締結するに当たっての経緯等に基づき総合的に判断していくこととなる。

よく読むと「『債務が確定』していることが明確となっている場合には」という前提があるため、フリーレントの会計処理がそのまま税務上も認められるとは解説していないのだが、実際に税務処理を行う際に会計上の処理がそのまま税務上も認められるという風に思い込んでしまい、その結果、否認事例がでてきているようである。

当該取り扱いについて、否認の根拠はこの裁決事例とのこと。平成30年6月15日裁決

ハ 当てはめ
本件についてみると、上記1の(3)のイのとおり、請求人は、平成27年4月30日付でG社との間で本件賃借契約を締結しており、本件事業年度終了の日までに本件賃借物件に係る賃料の支払に係る債務が成立している。また、同(3)のニのとおり、請求人は、本件事業年度において、本件賃借物件を賃借しており、本件事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生している。そして、本件事業年度終了の日までに本件賃借物件の賃料として合理的に算定できる金額は、上記ロのとおり、本件賃借契約書の特約条項により減額された後の月額賃料5,727,700円の6か月分である34,366,200円(本件支払賃料額)となることから、本件賃借物件に係る賃料として本件事業年度終了の日までに債務が確定した金額は、本件支払賃料額となる。
そうすると、本件賃借物件に係る賃料として本件事業年度の損金の額に算入される金額は、本件支払賃料計上額ではなく、本件支払賃料額とするのが相当である。

ニ 請求人の主張について (イ) 請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のイの(イ)、(ロ)及び(ニ)のとおり、本件支払賃料計上額について、債務確定の判定の3つの要件(法人税基本通達2-2-12)を満たしており、本件賃借契約のように中途解約不能で、中途解約した場合に残りの賃貸借期間の賃料を支払うことになっている長期の賃料減額期間のある賃貸借契約の場合、契約時に契約期間全体にわたる賃料総額の支払をすべき義務が確定していると理解すべきであり、契約によって受けている便益は契約期間全体において何ら変わりないことを踏まえれば、当事者間の合理的な意思としては、単に支払時期を遅らせているにすぎず、経済実態として、本件当初6か月間の減額された賃料を単なる賃料の値引きと見るのではなく、本件当初6か月間経過後の月額賃料に含めて支払っていると解するのが妥当であることから、本件あん分計算方式により算出した額に基づく本件支払賃料計上額は、合理的に算定された額であり、契約の相手方である賃貸人の経理処理の選択状況にかかわらず、本件事業年度の損金の額に算入できる旨主張する。
しかしながら、上記ロのとおり、本件賃借契約の契約当事者間では、本件賃借物件に係る本件当初6か月間の賃料の減額という法律効果が本件賃借契約(法律行為)に基づき成立し、当該法律効果を変更又は消滅させる他の法律行為があるとする証拠も認められないことからすれば、当事者間の合理的な意思として、単に支払時期を遅らせているにすぎないなどの請求人が主張する事実は認められないのであるから、本件賃借物件に係る賃料として本件事業年度終了の日までに債務が確定した金額は、上記ハのとおり、本件賃借契約の特約条項により減額された月額賃料に基づいて算出された本件支払賃料額である。そうすると、本件あん分計算方式によって平準化された月額賃料相当額に基づいて請求人が算出した金額(本件支払賃料計上額)は、一種の見積費用であり、本件支払賃料額を超える金額については、本件賃借物件に係る賃料として本件事業年度終了の日までに債務が確定した金額とは認められないことから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

裁決を見るに、賃料として合理的に算定することができないことから債務が確定しておらず、税務上は按分計算による損金算入を認めないということのようである。

按分計算について「一種の見積費用」であるとも言っているが、引当金のような見積もり費用とは大きく違うように思う。
按分計算も十分合理的な算定であるように思えるし、仮に本件が減額ではなく免除だった場合は判断に違いが生じたのか?という疑問がある。

いずれにしても、期ズレとは言え、フリーレントの金額は多額となる傾向にあり、加算税の金額も相当なものとなるため、テナント側のフリーレントの処理を行う際は留意が必要である。

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