実務対応報告36号
「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」(実務対応報告第36号)が、平成30年に導入されましたが、それ以降に新たなスキームとして、信託方式の有償ストックオプションなるものが考え出されました。
詳細な仕組みと税務の論点はさて置き(ググるとたくさん情報が出てきますのでそちらをご確認ください)、「会計処理はどうなるんだろう?」という疑問があります。
会計基準などを詳細に検討したわけではないのですが、
「最大のポイントは、オーナー個人が信託の委託者となって金銭を信託するという点にある。金銭を拠出するのがオーナー個人である以上、有償ストックオプションのように、会社の費用に計上という話が出てくることはない」(T&A master No667)
という情報がありましたので、どうやら、「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」(実務対応報告第36号)の対象とはならないようです。
大きな観点から見ると同じなのではないか?
スキームの細かな違いはあれど、大きな観点からみると、結局のところは有償SOと同じような取引ですので、有償SOのときのように、
「『費用計上が必要です』というお達し(実務対応報告)が、いつか出るのかな?」
なんて思っています。
連結の範囲での議論
だいぶ前となりますが、知り合いの会計士とこのスキームについて議論をしていたところ、
「信託を連結の範囲に含めるかの検討が必要」
というアドバイスを受けました。
「どういった会計処理があるべきかの議論の中での、一つのアイデアとしてあるのかな?」
くらいに思っていたのですが、最近受講した会計士向けの研修でも、同様の解説がなされていたので、連結の範囲に含めるかの検討が必要というのは、どうやらジャストアイデアではなさそうです。
考え方としては、新株予約権信託に受益者確定を指図できるのが、新株予約権を発行した会社の代表者である場合、この会社の「緊密な者」であるオーナーが事実上信託を支配していると言えるため、新株予約権信託が会社の子会社に該当する可能性があるとのことでした。
ESOPの時のように、
「連結ではなく総額法による取り込みなのかな?」
なんて考えたりもしたのですが、これもきっと、実務対応報告が対象とする取引に該当しないように設計されているのではないかと思われます。
ちなみに、仮に連結の範囲に含まれるとなったとして、
「どのような連結上の会計処理が想定されるのか?」
についての具体的な説明がありませんでした。
「有償SOのときのように条件達成の確度が上がったら費用計上なのかな」
などと考えてはみたものの、委託者である代表者が拠出している資金の部分の取り扱いがどうなるかなど、疑問点がいっぱいです。
いつか時間を見つけて、じっくりと研究してみようと思います。
日々精進。