会計ソフトの冊子
とある会計ソフトの会社から冊子が送られてきました。
普段であれば、興味がないのでそのままごめんなさいするのですが、ちょっと気になる見出しの記事があったので読んでみました。
税務行政のDX化
税務行政のDX化に伴い、税務調査もAI活用をはじめているという内容のものでした。
国税OBが監修しているのか、しっかりとした内容でした。
以前、連載で税務調査について書いていた際に、調査選定の方法について書いたのですが、昔やっていたことを書き起こしていて、随分とアナログなことをしていたんだなぁと思ったので、確かに、AIを活用することで、手間を省くという意味での効率化はできるんだろうなと思うわけです。
AIの活用に対してネガティブな印象はもっておらず、活用できるものはじゃんじゃん活用したらいいんじゃないかと思っています。
基礎データがしっかりしていることが大前提
この手の情報を読んでいて、いつも気になるのが、機械は間違えないけれども、人間は間違えるということです。
そして、AIが活躍するにあたっての基礎データを誰が作るのかというと、人間なわけです。
たとえば、法人事業概況書のOCR用紙に決算書の数値を記載して提出していますが、あの数値って、千円単位で記載するのですが、たまに円単位で記載されたものが提出されたりするわけです。
で、この数値をAIに読み込ませたときに何が起きるのかを考えると、単なる記載単位の誤りを、異常増減として識別してしまうんじゃなかろうかと思う訳です。
(もしかしたら、これぐらいの判定はAIはできるのかもしれませんが。)
私が会計監査をしていた頃くらいから、ビックデータを使った会計監査をしようみたいなトレンドがあり、いろいろと施策がはじまっていたのですが、現場で一番大変だったのが、機械学習用のデータを作るために、クライアントから入手したデータをきれいにすることでした。
当時に比べると、機械は優秀になっているのだと思いますが、まだ当分は、人の手を介する部分はなくならないじゃなかろうかと思っています。
そうすると、その部分(人が行う作業の部分)で、何かが起きてしまわないかが心配になるわけです。
DX化ですとか、AIの活用の話になるときに、なぜ、そこに、整ったデータがある前提で話が始まるのだろうかと疑問に感じるわけです。
申告書等の基礎データを整った状態にするための取り組みが、ないがしろにされないといいなと思っています。
最終判断は人がするわけで
念のため書きますが、活用できるものはじゃんじゃん活用して、効率化した方がいいと思っています。
なので、現在の流れに反対ではないのですが、少し気になるのが、将来的に、決算書を読める税務職員が減ってしまわないかということです。
決算書を読める方であれば、仮に、機械が変な調査選定をしてしまった場合であっても、調査対象としてふさわしくないと判断して除くことができると思うのですが、
「機械が選定したんだからあっているんでしょう。」
と盲目的に信じる方が大半になってしまった場面を想像すると怖いなと思う訳です。
そして、何らかの形・媒体で、調査選定の機械の処理プロセスが外に出たら、目も当てられないですよね。
いろいろと書きましたが、何がいいたいかというと、その基礎データはいったいどこからやってきて、それが間違っていないようにするために、どのようなことが予定されているのだろうかと気になっているということです。
ひと昔前の税務署には、内部事務をかちっと処理している職員がいらっしゃって、その方々のきれいな土台作りがあって、成り立っている部分があったと思っているのですが、その土台作りの部分がないがしろにならないといいなと思っています。
日々精進。
【お仕事のはなし】「税務調査を今一度ちゃんと考えてみる本」(税務経理協会様)