西野亮廣さんの書籍
最近、ビジネス雑誌やHow to本を読んでは、次を探してといったことばかりで、ゆっくりと本屋さんめぐっていないなと、ふと思いまして、いつもとは違う視点(ビジネスに直結するか否かにかかわらず読んでみたいと思うかという視点)でいくつか書籍を購入してみました。
その一つが、西野亮廣氏の「夢と金」という書籍です。
正直なところ、西野氏には、キングコングというコンビ名の芸人さんで、えんとつ町のプペルなど、新しいことを積極的にしかけている人という印象しかありませんでした。
ホリエモン氏や、にしむらひろゆき氏と、同じ括りで勝手にカテゴライズしており、彼らと似たようなことを言っているのかなと思っていたのですが、書籍をパラパラと見てみて、なんだかおもしろそうだなと思い、怖いもの見たさ半分で、購入してみました。
野球の大谷君の時もそうですが、誰かが新しいことにチャレンジしていると、やめとけであったり、絶対に無理、といった批判的な声がたくさん上がるように思っています。
それらをはねのけて突き進んでいく、西野氏の姿に興味を持っており、そして、その経験を経て、今、何を考えていらっしゃるのだろうか?ということにも興味があったということです。
優しそうな方でした
だいぶ、メディアに踊らされているなと実感できたのですが、西野氏に対して、攻撃的な言葉遣いをしている印象を持っていました。
それだけ、強く伝えたい思いがあるということだと思うのですが、だんだんとこういった口調が苦手になってきておりまして、少し敬遠していたのですが、書籍を読んだ感想は、
「思ってたんと、まったく違う。」
ということです。
書籍の初めの方は、強い口調で諭すような文調だったのですが、途中から、やわらかい口調で、子供にやさしく教えるような表現で、むずかしいことを(NFTのことなど)、本当にわかりやすく説明をされていました。
やはり、メディアなどの断片的な情報だけで、判断するのは良くないですね。
なぜ払うのか?
そして、この書籍で一番印象に残っているのが、この文章です。
「これ以上『美味しさ』を追求しても、『97点』か『98点』かの競争で、競合との技術差はほとんど生まれない」
ラーメン屋を営んでいたとして、ラーメンの味はすでに、90点台後半に来ているのに、まだなお、100点を目指し続けるのは良くないといったことをおっしゃっていました。
素人には、97点のラーメンも、98点のラーメンも味の違いはわからず、実際のところは、その店主さんであったり、そのお店の雰囲気が好きなどといった他の要素に、お客さんは惹かれているとのことです。
(てきとーな箇所を抜いて説明しているので、雑な説明となっていますが、実際に書籍を購入して読んでいただくとご理解いただけると思います。)
非常に共感できます。
我々士業が、まさにこの過ちを犯しがちだと思っています。
好きを極めるのは大切だともちろん思うのですが、たとえば、
「大手の税理士法人さんと他の税理士法人さんの役務提供面での違いを明確に出来ますか?」
と質問をしたとして、税理士も含めて、これをクリアに説明できる人っておそらくいないのではないかと思います。
(諸外国とのリファーラルと言ったことは超大手企業くらいにしか影響はないと思われます。)
まして、大手税理士法人に所属の方々の経歴を追ってみると、もともと、町の小さな税理士事務所で働かれていた方なども結構いらっしゃって、いよいよ、
「何が違うんですか?」
となってしまうのではないかと思います。
となると、なぜ、大手税理士法人に他の法人と比べて高い報酬を支払ってまで、顧問についてもらうのか(なぜ、払うのか?)ということとなるのですが、ありきたりではありますが、それは、大手と言うブランド価値がそのほとんどなのではないかと思います。
「うちの会社は〇〇税理士法人という大手の税理士法人さんに顧問についてもらっています。」
と言えることで、信頼感が増すこともあるのかもしれませんし、ただ、そういうことを言いたいだけかもしれません。
西野氏の、この書籍での説明は、ブランド価値だけにフォーカスしたものではなかったので、この説明では正確ではないと思われるのですが、読んでいて、ストンと個人的に来たのが、このことでした。
実際に、独立開業の挨拶に行った際に、「うちの税務はハイレベルだから」といったことをおっしゃられた方がいらっしゃいました。
もちろん、いろいろな含みがある発言なのだと思うのですが、この法人の税務を見ているのは、中規模法人の担当者の方でした。
「そんなにハイレベルなら、大手のその道の専門の税理士さんに見てもらったほうがいいのでは?」
(そもそも、「ハイレベルな税務って何?」という疑問もありますが。)
と思ったのですが、おそらくこの言葉の裏には、
「何のブランド価値もない君が、関与できるような法人じゃないんだよ。」
という意味が含まれているのだと思われます。
おもしろいですよね。
大手に所属していた頃に会いに行った時と大違いでした。
私と言う人間は何も変わっていないにもかかわらずです。
なぜ、独立したんですか?という質問
たまに聞かれるのが、「なぜ、独立したんですか?」という質問です。
この質問には、純粋にその理由(独立後にどんなことをしたいと考えているのか?)を問いたい場合と、なぜ、「あのステータスを捨てたんですか?」という疑問から来ている場合の、おおきく2つのケースがあります。
後者に対する、端的な答えがなかなか見つからなかったのですが、この書籍を読んで見つけられたような気がします。
答えは、
「自分の色のブランドを築きたかったから、そして、それには時間がかかると思ったから。」
です。
大手で働いていると、上場企業の社長や役付きの方とお会いする機会があり、専門家としてアドバイスをする機会があります。
村上博隆という40歳にもなっていない若造のアドバイスを、このような方々が真面目に聞いてくれるのは、大手と言う看板があったからに違いありません。
決して、私のサービスが99点や100点だからではありません。
仮にそうであったとしても、受け手はその違いを感じ取れないと思います。
大手で長い期間たくさん働いて、実績を積んだとして、その大手のブランドにはなにがしかの貢献はできるのかもしれません。
ただし、村上博隆という個人のブランドにとって何かプラスになるかというと、そうった組織に所属していたということで興味を持っていただくきっかけにはなりますが、村上博隆個人に対して、長く継続的に興味関心を持っていただくことにおいては、ほぼ意味を成さないと思っています。
なので、その環境でずっと働いていて、いつか、何らかのタイミングで、外にほっぽり出されたときに、つまり、大手と言う看板を失ったときに、自分の無力さを痛感して後悔するような気がしていました。
時間をかけずに、ぱっと、個人のブランド価値を築く術があるのであれば、突如、ほっぽり出されたとしても、なんとかなるのかもしれませんが、そんなものはなく、これにはとてつもない時間を要すると思っています。
なので、年老いてから、気づいても、時すでに遅しなわけです。
こういった状況には絶対になりたくなかったわけです。
当時、よく将来のことを考えたりしていたのですが、大手で働き続けることを前提にして考えると、私には、そういった光景しか見えていませんでした。
(よく言われている、大企業を定年退職してから気づく自分の無力さ云々というのと同じだと思います。)
なので、開業後すぐに順調にいくことはないだろう、バカにされることもあるだろう、大手の看板を失ったことで去っていく人もいるだろうということを覚悟のうえ、自分でやっていくことを決めました。
そして、実際に歩み始めて良かったと思います。
大手の看板がなくなっても、まだお付き合いしてくださる方々がいらっしゃいます。
本当に感謝しかありません。
ご祝儀案件なんだから、早く独り立ちしなさいよ、と思われているかもしれませんが(笑)
値付けの算定式
西野氏は値付けについて下記の式を用いておられました。
[夢]=[認知度]-[普及度]人が高いお金を払って満足できる状況は「夢」を買っている状況とのこと。
そして、「夢」は上記の式で算定されるとのことでした。
現在の、村上の「認知度」は限りなく「零」に近いと思います。
連載の執筆で少しくらい興味を持っていただいているくらいなのと、あとはもともとつながりがある方々で、看板関係なしにお付き合いしてくださる方々くらいですので。
で、「普及度」についても、業界全体で見れば、地を這っている状況だと思います。
私にできることは、このうち、「認知度」をあげることしかありません。
「業界最安値」や「税務調査に強い」といった打ち出し方をすることで「普及度」を上昇させることはできるのかもしれませんが、上記の式からわかるように、「夢」が小さくなります。
なんなら「夢」がマイナス値になってしまうかもしれません。
(期待はずれで、がっかりさせる状況ということになるのでしょうか。)
ということで「認知度」にフォーカスして、個人として活動しているのですが、どういったブランドを構築しようとしているのかについては、かなりブレブレだと思っています。
当初、HPを作った時は、信頼感を全面に押し出していましたが、このBLOGでは、何気ない発見など、はっきりいって、誰のためだかわからないような情報を日々綴っていたりします。
こういった面では新しいことにチャレンジしていると思っているのですが(単に、あれもこれもやりたいという性格なだけなのですが)、将来的に、上手くいっているか、下手こいてしまっているかは、私にはまったく想像がつきません。
やってみないと納得できない性分でして、のんびりと、でも、確実に一歩ずつ進んでみようと思います。
日々精進。