裁決事例
令和3年12月17日の裁決事例は、全自動乾海苔製造装置等の耐用年数について争われた事例です。
(令和3年12月17日裁決)| 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)
減価償却資産の耐用年数って、よっぽど恣意的に短い耐用年数を選ぶなどしていない限りは指摘をしていないのかなと勝手に思っていたのですが、本件は耐用年数が10年(食料品製造業用設備)か5年(水産養殖業用設備)かで争われており、個人的に興味が湧いたので、読んでみました。
もちろん、公表されている裁決事例ですので、もっと、しっかりと読みこんで理解すべきところがあるのだと思いますが、そういった点はあえてスキップして、少し書いてみようと思います。
耐用年数の判定
耐用年数の判定って、ある程度、形式的に、書面上などから判断できることで決まってくるものだと思っていたのですが、どうやら違いました。
すごいなぁと思ったのが、裁決書(抄)の「4 当審判所の判断」の「(2)認定事実」に書かれていたことです。
かなりその業種に詳しくないと、おそらく出てこないであろう情報がいろいろとありました。
(審判所は職権探知主義ですので、審判官自ら、調査をすることも可能ですが、おそらく、審査請求人(の代理人)が提出したのだと思います。)
- 原藻を養殖してから、乾燥させ、漁業協同組合に出荷するまでの工程
- 各工程の詳細な業務の内容
- 日本食糧新聞社発行の「加工海苔入門」にある情報(一次加工までを行う生産者と、二次加工を行う流通業者は完全に分離している)
などが説明されていました。
そして、その情報に基づいて、審判所は、審査請求人の事業がどういったものなのかを認定していました。
税務調査で、しかも、耐用年数の判定で、ここまで調べたうえで指摘をしているとは思えません。
この審判所の裁決に沿うと、耐用年数の判定にあたっては、その方のお仕事の内容や業界の理解をしたうえで、判断して然るべきと言うことなのだと思われます。
(こりゃ大変だ。)
耐用年数で審査請求にもつれ込む
事の発端は税務調査のようなのですが、修正申告をしたところ、それにかぶせるようにして、耐用年数を5年から10年にした更正処分を受けたので、かなり癪に障ったのだと思われます。
何か別のことで、もめていたんですかね。
この機械がどれだけ高価なのかの勘所はありませんが、いうても、トータルで見た経費算入額は変わらないわけです。
顧問税理士の方が、とてもこの業種にお詳しい方で、過去の法令や通達の取り扱いを熟知されており、それに基づいて判断したところ、調査官が形式的に更正処分をしたのか、それとも、調査官としてもどうしても譲れないポイントがあって、更正処分に至ったのか、どちらなのかは裁決書(抄)からはわかりません。
税務調査の対応の仕方によっては、こういった内容で、審査請求まで、もつれこんでしまうこともあるという良い勉強になりました。
日々精進。