1号文書と2号文書の特例
印紙税額の判定における記載金額は、基本的にはその契約書に記載されている金額とされていますが、1号文書と2号文書には特例があり、記号番号などで紐づけることができる書面があり、その書面に金額の記載がある場合は、その金額が契約書の記載金額として取り扱われることとされています。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/tebiki/pdf/03.pdf
こちらについては、特に論点はありません。
領収書の特例が恐ろしい
17-1号文書にも同様に特例があります。具体的には下記のとおりです。
この取り扱い、領収書の発行者が領収書を発行しているという意思がある場合には、あまり問題にならないと思いますが、そうではない場合に結構な金額の印紙税の貼付漏れが生じます。
具体的には、ローンの完済通知です。
ローンが完済された場合に、良かれと思って、完済された旨を記載した書面を、ローンの債務者に送付したりすることがあると思いますが、この書面が17-1号文書に該当する場合があります。
(もちろん、実際の税務調査では、どのような記載がされているかなどを詳細に確認しますので、完済通知のすべてが17-1号文書として取り扱われるというわけではありません。)
当然ながら、その書面が印紙税法にいう領収書に該当するなどとは、まったく想定していないと思います。
印紙税の税務調査で領収書に該当する旨の指摘を受けて、書面を見てみると、具体的な金額の記載がないので、
「なんだ、一通200円か。」
と思ってしまうかもしれませんが、先ほどの特例があるので、ローンの完済額が記載金額として取り扱われてしまうことがあります。
(完済額と紐づかないと、書面の受け手にとっても、「なんのこっちゃい」となるので、何からの情報で紐づけ可能と思います)
17-1号文書は、記載金額に応じて印紙税額が決まるので、発送通数がそこまで多くなくても、一通あたりの印紙税額が大きくなり、結果、数千万円単位での追徴となる場合もあるということです。
(結構あるある論点です)
印紙税の納税義務
印紙税の納税義務は税法には珍しく、連帯納税義務です。
一般的には、お互いがそれぞれ所持しておく分について、印紙を貼付をしているのではないかと思います。
書面を2通作成した場合に、2通ともの印紙の負担を求める、ジャイアン的な納税者がいたら大変だろうなと、ずっと思っていたのですが、ちゃんとそのような事態は生じないようにされていました(基本通達47)。
印紙税の納付方法(原則)
印紙税の原則的な納付方法は、収入印紙を貼りつけて納付する方法です。
そこまで頻繁に印紙を使用しない業種や規模感の法人の場合には、この方法が一般的だと思います。
ちなみに、この場合は印紙に割り印を押す必要があります。
よく見るのが、二重線で消すやり方ですが、これはルール上NGです。
このルールの趣旨は、印紙の二重使用を防止するためで、二重線で消した場合は、上から簡単になぞることができるためNGとされています(防止策にならない)。
ちなみに、適切に消していない場合は、印紙税額の過怠税が課されます。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/tebiki/pdf/04.pdf
一応、ルール上は過怠税の対象となるのですが、私は、税務調査の場面で見つけた場合は、その場ですぐに印鑑で割り印を押していただくか、印鑑の使用が難しい場合は、署名をしていただくことで、印紙の二重使用が出来ないようにしていました。
悪質なケースの場合は適切に対処すべきですが、二重線で消している場合などは、単にルールをご存じないケースがほとんどですので、適切な方法を周知することと、二重使用を防ぐことが達成できれば、それでいいやという思いからです。
これは、調査官の裁量によるところですので、所属している国税局や印紙税の金額(60万の印紙に割り印していなかったら、さすがに怪しいですね)によりけりだとは思います。
税印押なつによる納付(特例)
「税印押なつって、そもそも何?」
と思われる方がほとんどだと思いますが、特定の税務署に税印押なつ機が設置されており、それで印紙税を納めることも可能です。
「いったいどんな場面で使用されるのだろうか?」
と思われる方がいるかもしれませんが、私が見たことのある事例としては、出資証券を発行した場合にも印紙を貼付する必要があるのですが、印紙を貼って割り印をすると格好がつかないということで、税印押なつによる納税をされている納税者を見たことがあります。
税印押なつ機は、紙に圧をかけて、くぼみをつけることで納税済みであることを示すので、手で触ると、紙がへこんでいるのがわかるのですが、印紙を貼付して割り印をした場合にくらべて、朱肉などがついていないので、見た目がキレイに仕上がります。
納付計器による納付(特例)
納付計器という機械を使って印紙税を納税することもできます。
(一番よく遭遇したビルコン)
http://www.billcon.co.jp/product/ouin/ra1_1j.html
税務署で内勤していた頃は、
「印紙の納税のために、なぜにお金をかけてまで導入するのだろうか?」
と思っていたのですが、これって印紙税の盗難防止にとても便利なわけですね。
一番高い印紙ですと一枚で60万円しますし、不動産や建設業などの場合は頻繁に高額印紙を使うため、その管理が大変ということで導入されているように思います。
納付計器に印紙税額をチャージする場合、税務署の窓口で納税をしていただいて、そのあとに、税務職員が機械を開けてチャージします。
この作業が私はとても苦手でして、なぜかというと、納付計器にもいろんな種類があって、それぞれチャージのやり方が違うのと、なんと、一度金額の設定を間違うと訂正が出来ない(100万円チャージを間違って、1000万チャージすると、訂正できないので、追加で900万円の納税をしていただくこととなってしまいます)ので、めちゃくちゃ神経を使うからです。
今でも納付計器と聞くとぞっとします。
書式表示による納付(特例)
これも割と目にすることがあるかと思います。
銀行のATMで出てくる紙片なんかにも、たまに記載されているものがあります。
下記のような表示がされている書面があれば、その書面は印紙税法上の契約書に該当して、印紙税の書式表示によって納税しているということです。
この取り扱いは税務署に申請し、承認を受けて初めて利用できる制度なのですが、外国法人の日本支店(だったと記憶)が、申請もなしに、上記の記載をしていたのを見たことがあります。
ぜひとも税務調査をしてみたかったのですが、残念ながら私にはお鉢が回ってこなかったので、いったいどんな理由で申請もなしに、そのようなことをしていたのかの理由を知ることはできませんでした。
書式表示を受けていても、印紙税の税務調査で指摘を受けることがあるのですが、それについては、以下の記事で解説しています。
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今回は、「印紙税の税務調査で多額の非違が認められる項目(ローン完済通知)」について解説しました。普段何気なく作成している文書が課税文書に該当してしまうこともあることにお気づき頂けたかと思います。
以下の記事では、印紙税の税務調査で多額の非違が認められる他の項目について解説していますので、こちらの記事も併せて読んでみてください。
印紙税の記事を書き始めたきっかけについては下記の記事をご覧ください。
日々精進。
2024年7月2日に「税務調査を今一度ちゃんと考えてみる本」(税務経理協会様)が発売されます。