領収書に貼付する印紙税額
売上代金に係る金銭の受取書(領収書)は、17号の1文書に該当するため、印紙税が必要です。
コンビニで公共料金の支払いをした場合や銀行手続きなど、普段の生活で目にすることがたまにあるので、皆さんご存じではないかと思います。
貼付する印紙税額は領収書に記載の金額に応じて決まります。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/tebiki/pdf/08.pdf
分割して作成すると印紙税の節約ができる
細かな話ではあるものの、領収書を分割して作成すると、一枚で発行した場合に比べて印紙税額が安くなることがあります。
領収金額が1億円を超えたあたりから、印紙税額が数万円単位で増えるので、1億円を少し超えているような場合に、領収書を2枚発行して、1億円以下の区分に入るように領収書を作成するという方法です。
たとえば、1億1000万円の領収書を一枚で作成した場合は、4万円の収入印紙が必要となりますが、1億円の領収書と1000万円の領収書の二枚を作成した場合は、2万円と2千円の合計2万2千円の収入印紙が必要となるので、差額の1万8千円が節約できるということです。
同様のことは支払手形でも可能です。仕組みは同じです。
どういった業種で行われているのか?
印紙税調査で、この分割の方法に遭遇したのですが、確か、建設業(ゼネコン)だったと思います。
建設業界では、支払いに手形を使うことは一般的なことですし、手形を受けとった側も領収書を発行しますし、その金額も多額になるので、少し手間をかけてでも、上記の方法をして印紙税の節約をすることのメリットがあるということなのかなと思っています。
ネットでこの領収書の分割について、調べてみて知ったのですが、租税回避なのではないか?という意見もあるようですね。
印紙税が形式的な側面が強い税法だと思っているからか、調査官として税務調査の場面で遭遇しても、「あぁ、確かに税額減りますね」といったくらいにしか思っていませんでした。
あんまり真剣に考えたことがなかったので、いい気づきになりました。
消費税の記載に注意が必要です
上記の領収書の分割にあたっては、消費税の取り扱いについて、少し注意が必要です。
たとえば、税込みで1億2100万円(消費税額1100万円)の領収書を分割して作成する場合は、まずは1億円の領収書を作って、もう一枚は残額の2100万円分の領収書を作成しようとするのではないかと思います。
そうすると、領収書が一枚の場合に、4万円必要だった印紙(下図黄色ハイライト)が、2万円(緑ハイライト)と2千円(緑ハイライト)の合計2万2千円の印紙で済むため、差額の1万8千円が節約できる、と思われるのではないかと思います。
ところが、2100万円分の領収書に、たとえ「1100万円の消費税を含む」と記載されていたとしても、消費税を除いた金額の1000万円で印紙税額を判定することはできません。
この場合、2100万円で印紙税の金額を判定することとなるため、6千円(水色ハイライト)の印紙税が必要となり、合計2万6千円の印紙が必要となります。
なぜ、上記のような取扱いとなるのかについてですが、記憶ベースですので、理由付けに誤りがあるかもしれませんが、下記にある「その取引に当たって課されるべき消費税額等が明らかである場合」に該当しないからだったと記憶しています
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/tebiki/pdf/03.pdf
よって、税込1億1000万円(消費税額1000万円)の領収書と、税込1,100万円(消費税額100万円)の領収書を発行するのが正しい対応だったと記憶しています。
これで、「その取引に当たって課されるべき消費税額等が明らかである場合」に該当し、それぞれの金額から消費税額を除いた金額で印紙税額の判定が出来ます。
印紙税の税務調査をしていた頃であれば、自信を持って説明できたのですが、あまりにも時が経ち過ぎて、取り扱いが記憶の彼方となっていたため、少し自信のない感じの解説となってしまいました。
おそらく上記で合っていると思いますが、消費税額の記載の取り扱いは意外と厳密ですので、ご注意ください。
印紙税の記事を書き始めたきっかけについては下記の記事をご覧ください。
日々精進。
2024年7月2日に「税務調査を今一度ちゃんと考えてみる本」(税務経理協会様)が発売されます。