売上原価と販管費の区分
私が監査法人でIPO支援をしていた頃に、よく出会った論点として、原価販管問題があります。
売上原価と販管費のいずれに区分すべきかという論点です。
論点としてはシンプルなのですが、実際に区分してみようとなると、意外と悩ましい論点なように思っています。
定義から解決を試みる
定義から入れば解決できるのではないか?と考えてみました。
「売上原価」については、「売上原価は、売上高に対応する商品等の仕入原価又は製造原価であって」(企業会計原則第二 損益計算書原則 (営業利益)三C))とありましたが、
「販管費」については、定義を見つけることができませんでした。
一般的には、
「売上原価」は、販売された商品・サービスを生み出すために必要な費用で、売上と紐づけることができるもので、
「販管費」は、商品・サービスの販売活動や会社全体の管理活動に必要な費用で、売上に紐づけることができないもの、
といった説明がされています。
レストランの原価販管区分
レストランを想定して、原価販管区分をしてみようと思います。
レストランで働いている人は、店長、コック、ホールスタッフがいらっしゃいますが、店長は全体を管理している人ですので、「販管費」になりそうです。
コックはレストランの商品&サービスである料理を作っているので、「売上原価」になりそうです。「製造原価」に近いのかもしれません。
最後にホールスタッフですが、オーダーを取ったり、テーブルをきれいにしたり、お会計をしたりと販売活動をしていますので、「販管費」になりそうです。
レストランの事例ですと、明確に分業されているので割としっくりくるのですが、たとえば、コンテンツビジネスでプレイングマネージャーの方は、時にはプロジェクトの管理者として、時には一作業員として働いているので、「売上原価」と「販管費」の両面を持つことになり、少し厄介なことになってきます。
時間で分けるくらいしか、この問題の解決策を今のところ持ち合わせていないのですが、マネージャーさんに、
「売上に直接紐づく稼働時間と、そうでない稼働時間を分けてください」
と伝えたところで、
「いろんな意味で、よくわからんわ。」
となってしまいます。
ホテルの原価販管区分
ホテルの会計監査を経験したことがあるのですが、このときも、
「原価販管問題があるのかな?」
と思ったのですが、ホテルの場合は、(一般的なのかどうかはわかりませんが)ユニフォーム・システムといって米国の会計の考え方を取り入れているので、特に論点とはならないようです。
ユニフォーム・システムに関する書籍を購入して勉強してみたところ(書籍が残念ながら行方不明となっており、読み返すことができませんでした)、割とカチッと区分けがされていたように記憶しています。
実際、そのホテルもカチッと区分けされていました。
法人税での論点
法人税においても似たような論点があります。
一人親方などの役員報酬が販管費ではなく、売上原価(工事などが未了の場合は仕掛品)となるのではないかという論点です。
これについては法基通2-2-9(技術役務の提供に係る報酬に対応する原価の額)に沿って取り扱われることとなるのではないかと思います。
日々精進。