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【税務調査】税務調査で、3年前の取引について正確に答えられますか?

会計監査のはなし

税務調査のヒアリング

国税調査官として税務調査を、会計監査人として会計監査を経験して、両者のヒアリングのやり方の違いを知り、

「税務調査のヒアリングをもう少し効率的・効果的にできないものか?」

と思っています。

税務署が行う中小企業の税務調査では、事前に準備をしておいて欲しい資料を調査先に伝えるということは基本的にはしていないと思います。

事前に伝えることで証拠の隠ぺいや口裏合わせをされる可能性があるからと私は教わりました。

また、ヒアリングに際しても同様でして、事前にヒアリングしたい事項などを伝えることはしていませんでした。

国税局が行う調査(調査部調査を想定)の場合、調査開始前に顔合わせを兼ねた事前打ち合わせを行い、その際に事前に準備をしておいて欲しい資料の一覧の交付を行い、資料の準備をしてもらっているようです。

事前準備もなしに調査開始とともに、

「請求書が見たいんですが」

などといったところで、税務調査の対象となる数年前の資料は外部倉庫にあり、調査先が対応できるわけがないからです。

ただし、規模の大きな法人に対する税務調査であっても、ヒアリングを行う際は、ヒアリングの対象部署は特定したとしても、事前にヒアリングしたい内容を詳細に伝えることはしていないようです。

いつも思うのですが、数年前の取引について、当時の書面などを見ることなく記憶だけを頼りにして、質問に対して正確に回答できる人間などいるのでしょうか?

小規模な会社であれば、顧問税理士などが適切にフォローしてくださることが多いので、このようなやり方でもなんとかヒアリングが成り立つように思うのですが、大規模法人に対する調査で同じようなやり方をしていても成り立たないと思っています。

サンプルでもいいのでヒアリングしたい特定の取引を事前に伝えてくれれば、事前に当時の稟議書を見返したり、関連するメールを見返すことができるので、調査官がヒアリングで回答を求めるような細かな内容についても詳細に回答ができやすくなり、より効果的なヒアリングとなるのではないかと思っています。

調査部調査のように調査先がある程度の規模になり、調査立ち合いの経理部員などが信頼できるような人物なのであれば、このような対応をしても証拠の隠ぺいや口裏合わせのリスクはそこまで高くないのではないかと思っています。

「従業員という立場で税務調査対応を行っている人が、自らを危険に冒してまで不正に加担するというリスクを冒すのか?」

という疑問もありますし。

会計監査のヒアリング

会計監査では、ヒアリングを行う目的やヒアリングの対象となる取引を事前に伝えるなどして、ヒアリングが効果的に進むようにしていました。

税務調査のようなやり方でヒアリングをしたところで、

「そんなこといきなり聞かれてもいちいち覚えていないですよ。」

とキレられるのがオチで、お互いの時間を無駄にしてしまうこととなってしまうからです。

現在は税務調査をする側でもなく、会計監査をする側でもなく、ヒアリングを受ける側に同席する側ですが、調査官からヒアリングの依頼を受けた際は、必ず、対象者とヒアリングの主な目的、特定の取引についてヒアリングをしたいのであれば、サンプルでもいいのでヒアリングしたい取引を事前に伝えるように依頼をしています。

人の記憶はアテになるのか?

国税在籍時に読んだ検察OBの講演録に

「被疑者に対して質問をするときは、事件当日の天気から質問をはじめる。そして、事件当日の天気を調べ、回答内容と相違していないか確認する。雨だった場合など記憶に正確に残っているものだ。」

といったことが書いてありまして、

「なるほど、そうやってヒアリングをするものなのか」

と思い、さすがに天気を聞くことまではしていませんでしたが、

「記憶ベースでもいいので回答をお願いします」

といって税務調査ではヒアリングをしていました。

税務調査を経験して感じたことなのですが、人の記憶ほど当てにならないものはないと思います。

最近、自身の子供の頃の記憶で実感したのですが、無意識に自己の都合のいいように事実とは無関係に過去が記憶される傾向があるのではないかと思います。

真面目な納税者ほど、

「その場で回答できないとまずい」

と考えるからか、記憶ベースで回答しがちで、その結果、回答内容と当時の稟議書など書面に記載されている内容とに、齟齬が生じてしまい、

「なぜ嘘をついたんですか」

と、問い詰められてしまっているように思っています。

意図的に嘘をついたのであれば、問い詰められてもしょうがないと思うのですが、だいたいの場合は些細な違いであり、

「単に記憶違いしていただけなんじゃないですか?」

ということがほとんどなように思っています。

このような状況は、問い詰められる回答者にとって、とてもストレスを感じることですし、調査官にとっても、本来時間をかけるべきではないことに、余計な時間をかけてしまっているように思われますので、ヒアリングのやり方をもう少し工夫することは、お互いにとってメリットがあるのではないかと思っています。

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