書き損じの領収書
税務調査では、売上取引にかかる領収書の控えと売上の元帳を突合をするという作業を行います。
取引代金の決済は銀行振り込みが一般的ですので、現金で支払いを受ける取引というのはスポットの取引か少額の売上くらいなのですが、意外にも、計上が漏れていることが多かったので、念のためということで必ずチェックをしていました。
そのチェックをしていると、書き損じの領収書の控えが出てくるのですが、書き損じの原本を破棄してしまっているケースが稀にありました。
納税者の方に、
「書き損じであっても原本はホチキス止めするなどして保存しておいてくださいね。」
と指導していたのですが、
「なぜに??」
といった反応をされたことがあり、
「書き損じの領収書の原本を保管することは一般的じゃないんだな。」
と思ったのを覚えています。
領収書が独り歩きします
その時の顧問税理士先生の説明が非常に上手だったので、いまだに覚えているのですが、
「領収書が独り歩きしちゃうから、書き損じも保存しておかないと駄目ですよ。」
とおっしゃっていました。
まさにです。独り歩きします。
調査官としては、もちろん書き損じの領収書の数にもよりますが、実際は領収書を発行したにもかかわらず、書き損じに見せかけて売り上げを除外しているのではないかということを考えざるを得なくなります。
どうやって調べるのかについては、原価から追うであったりと、いろいろとあるのですが、いらないから捨てただけなのに、まるでその行為が売上を抜いた行為のように見られてしまいます。
空の領収書をくれるお店もあるらしいです
税務調査先の社長が教えてくれたのですが、空の領収書を発行してくれるお店があったり、まったく別のサービスを受けたのに実在する飲食店の領収書を発行してくれたりだとかがあるそうです。
(私が東京の下町の税務調査をしていたので、そのエリア特有かもしれませんが。)
たとえばサラリーマンが空の領収書を何らかの方法で入手したとして、テキトーな金額を記載した領収書を会社の経費精算に回したとします。
そして、そのサラリーマンが勤めている会社に税務調査が入ったときに、調査官が経費精算から現金の支払いをピックアップして、取引情報として資料化したとします。
この取引資料をもとに空の領収書を発行したお店を調査した場合、この領収書に記載された金額の売上は実在しないにもかかわらず、売上が計上されていないと指摘を受けてしまうという事態が生じてしまうのではないかと思っています。
売上台帳などで売り上げを正しく計上していることを証明しようとしても、実際にそのお店で実際に使用している領収書に金額が書かれているので、それが架空のものだという立証はかなり難しいのではないかと思います。
なので、領収書の管理が杜撰なお店を見ると、
「あぶないなぁ~。」
と思います。
最近、税務調査に関する読み物を書いているからか、いろいろと昔の記憶が蘇ってきております。
税務調査をしていたのは平成ですが、昭和のかほりがする内容ですね。
書いていて、
「何か古い話をしているなぁ」
と思ってしまいました。
日々精進。