会計の専門家向けの読み物
2~3か月に一度くらいのペースで送られてくる、会計士を読者層としている無料のマガジンを読んでいます。
いつもはマガジンだけが送られてくるのですが、今回は、広告?のようなペーパーが同封されていました。
資格をもっていることと、それが得意ということは別のこと
ペーパーの内容は、弁護士・会計士・税理士の資格をお持ちの方を紹介したものだったのですが、いろいろなご経験をお持ちだったので、素直にすごいなと思える反面、さすがにこれは無理があるんじゃなかろうかという表現がありました。
それが、表題の表現です。
私も似たようなことを言っておりまして、
「会計と税務が絡む論点を得意とします」
といっていますが、なぜそう言えるかというと、両方について資格を持っているだけではなく、調査や監査をする側としての経験と、申告書や決算書を作る側としての経験の、両方についての実際の経験があるからです。
そして、過去の経験だけでは劣化していくので、実務はもちろんのこと、研修を受講したり、書籍を読んだり、実際に業務に携わっている人(監査法人の同期など)から話を聞いたりして、メンテナンスをしています。
資格をただ持っているだけでは恐ろしすぎて、とてもじゃありませんが、得意だなんて言えません。
法令vs会計基準
なぜこう言えるかというと、会計士資格をお持ちの弁護士さんと関連当事者の範囲の議論をした経験に基づきます。
(資格はお持ちでしたが、会計監査などの会計の実務のご経験はない方でした。)
関連当事者の範囲って、会計基準もありますが、会社法計算規則(だったはず)にも、規定があります。
弁護士的な視点で会社法計算規則に則って関連当事者の範囲を考えた場合と、会計士的な視点で会計基準に則って関連当事者の範囲を考えた場合、考え方の違いから一致しないケースが出てきます。
どういった考え方の違いかというと、会社法計算規則は法令なので、そのルールでカバーしきれない範囲は、趣旨や実際のその会社の状況などを鑑みて、関連当事者に含めるべきなように思われたとしても、含まれないと考えることとなるようです。
(議論をしてみて、このように感じたというです。)
会計監査の経験に基づいて、
「会計基準を踏まえて考えると、関連当事者に含めるべきという判断になりますよ」
とお伝えすると、
「含めるにしても、どの条項が根拠になるんですか?」
という議論に必ずなります。
ルールにないことを、専門家個々人で勝手に判断すべきではないという考え方なのかなと思っておりまして、法令にあることを重んじる考え方なので、とても素晴らしいと思っており、この考え方に対して特に思いはありません。
対して、会計はどうかというと、はっきりいって、監査チームやそのパートナーの判断で変わりえます。
特に、関連当事者の範囲の考え方が顕著で、これと似た連結の範囲も同様です。
仮にクライアントから、
「この法人って関連当事者の範囲に含まれますかね?」
と聞かれたとして、その方が、単に会計基準に明るくない場合を除くと、基本的には、この質問をした時点で、関連当事者の範囲に含めるべきという結論になることがほぼ確定です。
「どうやったら関連当事者の範囲から外れますか?」
と言う質問も同じで、その会社をコントロールすることができているから、
「どうやったら」
という発想につながるので、この質問を受けた場合は、さらに確定度合いが高まります。
こういったことって、実際の経験(会計監査)を通じてしか、得られないわけで、会計士の資格を取ったところで、会計基準のどこにもそんなこと書いていないので、わかりっこないわけです。
そのほか、組織再編などで、多額の「負ののれん」が生じてしまった際に、会計基準で認められているから当然に利益計上が認められると考えていると間違いですし、「正ののれん」の償却期間が20年で当然に認められると考えるとそれも間違いです。
(これは割と有名ですが、5年が一般的ですね。ただ、20年が認められた事例もあると聞いたことがあります。)
商売ってそういうものなんですかね
私、会計士と税理士の両方の資格をプロと言えるレベルにキープするのに、だいぶ四苦八苦しています。
税法は毎年変わりますし、会計基準も新しい基準が開発されています。
また、それぞれ、範囲が膨大過ぎて、すべてカバーなんてとてもじゃないですが、出来ません。
(税法だと、法人税、消費税、所得税、相続税、贈与税、国際税務、事業承継などなど、いろいろなジャンルがありますし、会計だと、日本基準、IFRS、公会計などなど。)
そういったこともあってか、たいていどちらか一方の資格にフォーカスされてお仕事をされている方が多いように感じており、何度もお客様から、
「会計と税務のどちらがご専門なんですか?」
と聞かれました。
そのたびに
「両方です。」
と答えていますが、たいてい、キョトンとされてしまいます。
ちなみに、野球選手の大谷君にちなんで、
「会計と税務の二刀流です。」
と知り合いに言ってみたことがあるのですが、
「あれは大谷君だから認められるんですよ(笑)」
と笑われてしまいました。
まぁ、確かに、安易に拝借すべきではないですね。
メジャーリーグで通用する二刀流になれるように頑張ります。
日々精進。