TOEICの点数を追い求めることについて
英語をここ3年間くらい根詰めて練習しているのですが、やればやるほどに、
「どこまでやったらいいのか?」
といった気持ちに陥ることが増えてきました。
まず、学べば学ぶほどに、ジャンルが無限に広がっていきます。
日本語も同じですよね。私は会計や税務の日本語に詳しいですが、ITの日本語にはそこまで詳しくないですし、社会学や哲学などの学問にも明るいわけではありません。
また、文化などのその国に身を置くことでしか経験することのできないものが、コミュニケーションにおいて、いかに重要であるかを感じることも多くなります。
そうすると、ある程度のレベルまで行ったら、あとは、英語を練習し始めた理由(私の場合は、会計や税務に関することを英語で平たく説明できるようになりたい。)を再確認して、それに向かってひたすらに突き進むことが重要なのかな、なんて思ったりします。
会計や税務の英語を練習するには、IRSのサイトを探索してみたり、IFRSに関係するレポートを読んでみたり、英会話レッスンで自分の仕事内容や現在対応しているプロジェクトの内容を説明してみたりすることが良いのですが、これがTOEICの点数アップにつながるかというと、まったくではありませんが、ほぼ影響しないように感じています。
そういったことを悶々と考えていると、
「TOEICの点数って高く取った方が良いのかな?何のためなんだろう?」
と思いだしたりするわけで、ネットで関連する情報を読んでいて、とある方がブログでTOEICの点数で900点以上をとることを「錯覚資産」だとおっしゃっていたのを見つけました。
「錯覚資産」って何?というのが、正直なところだったのですが、どうやら数年前に流行った言葉で、それについて書かれた書籍があるとのことでしたので、さっそく取り寄せて読んでみました。
「錯覚資産」とは
詳細は「人生は運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている」(ふろむだ著 ダイヤモンド社)を読んでいただくことが良いと思いますが、ざっというと、人間は物事を判断する際に、我々が思っているほどに(期待するほどに)合理的に判断をしておらず、資格などのわかりやすい情報に無意識に飛びついて、判断をしているとのことでした。
そのわかりやすい情報が「錯覚資産」なのだと理解しました。
(読み終わって数日経過後に書いているので、多少ニュアンスが違うかもしれませんが、そこはご容赦ください。)
士業ってこの「錯覚資産」で商売をしているんだな、と実感させられることが最近よくあり、本で読んだことが、実生活でこれほど頻繁に意識させられることがないので、
「おもしろいなぁ~」
と感じたので、備忘も兼ねて、少し書いてみようと思います。
税理士会の集まり
先日、所属している税理士会の支部の集まりに出席してきました。
東京税理士会から関東信越税理士会へ移って来てから、初めての集まりへの出席でしたので、同世代の方と、名刺交換をしたり、これまでの経歴や、現在の事務所のことを簡単にですが、紹介させていただきました。
そこで、とある方が、私の経歴を聞いて、
「エリートですね。私は雑草なんで。」
とおっしゃられました。
(嫌味な感じは全くなく、かといって話を盛り上げるための、よいしょでもない感じでです。)
非常にびっくりしました。
「ユニークな(変わった)経歴ですね」
と言われることはよくあるのですが、「エリート」と言われたのは始めてだったからです。
そもそも私は「高卒」です。
一応は、夜学は卒業しましたが、働きながらだったので、キャンパスライフを楽しんだ記憶は全くなく、ひたすら出席カードを書いては、内容が有るような無いような論文を提出したりして、一応は大学も卒業しておきましたといったくらいです。
(履歴書上は大卒だけれども、気持ちは高卒。)
おそらくですが、公認会計士、大手監査法人、大手法律事務所といった「錯覚資産」が働いたからではないかと思っています。
会計士ということで安心
知り合い会計士の伝手で、税務に関してご質問がおありの開業している会計士の方と、お話をする機会もあります。
その場面で、複数の会計士から
「Big4に所属していた会計士または税理士だと安心する」
と言われたことがあります。
正直なところ、Big4に所属している会計士や税理士でもピンキリではないかと思っているのと、その個々人の性格によるところや相性によるところが大きいのではないかと思っているのですが、「会計士」「Big4にいた」という錯覚資産が働いて、どことなく安心感を与えることが出来たのかなと思っています。
ちなみに、初めてお会いする場面では、あらかじめHPなどを拝見して、その方のご経歴などを確認させていただているのですが、その方が東大を卒業しているという情報を見て、なぜか安心することができました。
これも「錯覚資産」なのだと思います。
(もちろん、その方の人格も素晴らしかったのですが、お会いする以前に、そのように感じられたことについてということです。)
所属していた組織のネームバリュー
これは、独立あるあるだと思うのですが、大手の会社などにお勤めだった方が、独立して、会社の看板を使えなくなった途端に、単なるおじさんになってしまったと話をよく目にします。
私も独立すると決めてからは、独立に関するこの手の情報をたくさん読んでいたので、看板を使えなくなることで、お付き合いがなくなるクライアントがたくさんいるだろうなと覚悟していたのですが、まさにこれが起きました。
(もちろん、しっかりと私自身を見てくださっていた方もいらっしゃり、その方々とはそのようなことは起きませんでした。)
大手の事務所で東京のど真ん中にある綺麗なビルの広い会議室で、クライアントをお迎えするのと、どこぞの若いのが埼玉県で開業したぞ、ということでは、先方の対応が変わるのも当然だと思うのですが、やはりこれも「錯覚資産」が働いていたのかなと思っています。
独立した途端に、私の会計士・税理士としてのスキルや経験が一気になくなるわけではなく、むしろ、日々アップデートしているので磨きがかかっていると思うのですが、私が過去に所属していた事務所名などを一切出さずにご挨拶をしても、そもそも会ってすらいただけない、名刺をいただけない、名刺を交換していただいても名刺を保管していただけない(おそらくゴミ箱行き?)といった風に先方の対応が大きく違います。
国税調査官をしていたときに、たくさん経験をした(税務署が来ているので、丁寧に対応をしているのであって、村上個人に対して丁寧に対応をしているわけではない)ので、少し懐かしくもあったりするのですが、「錯覚資産」の威力を再確認するいい機会になっているように思っています。
サンダルを履いて、近所で買い物
事務所を自宅の近所で構えているので、特にお客様との面談の予定がない場合は、ポロシャツにサンダルという服装で仕事をしています。
なので、この格好で事務所の備品などを買いにいったりすることがあるのですが、その時のお店の店員さんの対応が結構おもしろく感じています。
事務所に勤めていた頃はスーツを着ていたので、
「ちゃんと買い物をしてくれそうなお客さんが来たぞ」
といった風にご対応していただけることが多かったように記憶しています。
ところが、現在は、30代後半のおじさんが、昼間にポロシャツにサンダルで備品を買いに来るとは誰も思わないのか、明らかに店員さんが万引き犯でないかを警戒して、私がいるあたりの商品を、突如整理しはじめたり、サービスを利用したいと思っており、疑問点があるので質問をしているのに、そもそも買う気がないだろと思われているのか、雑な対応をされるといったことが頻繁に起きます。
(これは明らかに私の問題ですが、別に雑に扱われても気にしないので、服装を変える予定はありません。もちろん、場面に応じた格好をします。仕事の効率性も重視したいということです。)
先日、お昼ご飯で行ったお蕎麦屋さんの軒先にベンツが駐車されており、店内には、ピシッとした白ワイシャツときれいなダークスーツを身に纏った方がいらっしゃったのですが、私はこの方のことを一切存じませんが、「ベンツ」、「ピシッとした白ワイシャツ」、「ダークスーツ」という情報だけで、
「きっと、この方はすごい人(社長とか?)なんだろうな」
と感じました。
そもそも、軒先のベンツがこの方の物かも明らかではありません。
新規顧問契約を年間で100件獲得も錯覚資産か?
開業してから、事務所宛のダイレクトメールで、
「新規顧問契約を年間で100件獲得した税理士が語る」
みたいな、セミナーのご案内を頂くことがあります。
もちろん、嘘はついておられないのだろうとは思っているのですが、100件という数字を見た時に、税理士としての経験がある程度おありの方は、
「何か重要な情報が欠けていないか?」
と思うはずです。
「年間で100件」が「錯覚資産」なのではないかということです。
繁盛してそうに見えますので。
税務調査をしていた頃に、立ち合いされている事務員の方に、担当クライアント数を必ず聞いていたのですが、
「一人で担当できるのは30件が限界」
と皆さん口を揃えたようにおっしゃっていました。
この情報に依拠すると、100件のクライアントを対応するには、最低でも4名の事務員が必要ということになりそうです。
(もちろん、事務員さんが自走できるくらいの経験とスキルをお持ちであることが前提となります。)
そして、30件といっても、クライアントの規模も影響するわけで、ほとんどが個人商店の法人成りといった状況の法人とのことでした。
なので、自計はおそらくできておらず、証憑丸投げでOKみたいな対応にならざるを得ないのではないかと思います。
最近は、freeeなどの便利なツールもありますが、それらを有効活用したとしても、とくに関与開始直後は、完全自動化は難しいのではないかと思います。
ということで、
「年間100件も顧問先が増えてしまうと、しっちゃかめっちゃになってしまいはしませんか?」
と思う訳です。
繁盛している=いい先生だろう、と思って、依頼してみたら、なんのこっちゃないみたいになったら、がっかりではないかと思います。
スイッチングコストも結構だと思いますし。
それとも、新規獲得が100件で、ロストもそれなりにある、または対応している業務を質問対応だけといった風に絞っているのでしょうか。
質問対応だけでも、即答できるような簡単な質問を受けてしまうと、電話が鳴りやまないことになりそうですし(年末調整の時期の昔の税務署がこれでした。受話器を置くと、すぐになり始めます)、難しい質問の場合は、根拠が求められ、その根拠が正しいのかの裏取りが必要になりますので、一人で100件以上の顧問先の対応はできないと思います。
税理士を雇って、みんなで対応しているということなのでしょうか。
自然の摂理にあがらうつもりは微塵もありませんので、「錯覚資産」も大切にしていきたいと思いますが、それと同時に、お客様をがっかりさせてしまうことのないように、実力もしっかりと担保していきたいと考えた次第です。
日々精進。