下町にある法人の税務調査
税務署にいた頃は、下町を管轄している税務署の在籍期間が長かったので、下町にある法人の税務調査を長く担当していました。
そのあと、大規模署へ異動となったのですが、
「同じ東京都区内なのに、こうも違うものなんだなぁ~」
とカルチャーショックを受けたことを覚えています。
たとえば、
「契約書ありますか?」
と聞くと、
「そんなん作ってないですよ」
といった返しが多かったのが下町で、大規模署が管轄しているエリアでは、
「もちろん、ありますよ」
といって、そこまで規模が大きくない法人であっても、しっかりと契約書を締結されていました。
若手職員の登竜門
東京局に所属する若手職員の登竜門と言いますか、ほぼ必ず通る道として、地方にある税務署への異動があります。
千葉の房総半島や銚子、山梨県下の税務署に異動することがそれにあたります。
私は、夜間大学に通っていたこともあり、一番初めに配属された署は大学への通学がしやすい署でしたし(都心にあるということです。配慮してくださったのだと思います。)、そのあとは、会計士試験に合格したら辞めます宣言をしていたからか、この登竜門を経験することはありませんでした。
今になって思うと、地方の税務署を一度は経験してみて、時間の流れ方の違いなどを経験してみても良かったかなぁ、なんて思います。
ちょっと古い表現に慣れる
下町の税務調査をしていると、いろいろな表現を知ることができます。
そのなかで、一番思い出に残っているのが、「みそか締め」です。
概況聴取で締めと払いについて質問をするのですが、
「うちは『みそか締め』ですね~」
とおっしゃる方が結構いらっしゃいました。
正直言って、そのタイミングでは、どういう意味なのかわからなかったのですが、あとでネットで調べてみると、「月末締め」のことを「みそか締め」と言うそうです。
毎月末が「晦日(みそか)」で、年末が締めくくりとして「大晦日(おおみそか)」ということらしいのですが、あまり聞かないですよね。みそか締め。
それ以外にも、
「はんきん、はんて」(取引代金の半分は現金決済で、残りの半分が手形決済のこと。)
「はんかんひ」(販売費および一般管理費の略称。)
なども最初は何を言っているのかわかりませんでした。
(「反感」などマイナスなイメージの言葉があるので、何かあまりよろしくない費用(「反感費」か「反関費」)なのかなと思っていました。当時20歳。)
立会している税理士さんがよく使う言葉
立会している税理士さんが使う言葉もだいぶ違かったように思います。
よく覚えているのが、
「トントン」「いってこい」「どっこい」
です。
「トントン」は差し引きトントンになるという言葉の「トントン」の部分のみを抜き取った表現だと思われ、プラスマイナスでほぼ影響なしという意味だと理解しています。
「ご指摘の収益を加算しても、ほぼ同額の費用も認容されるから、トントンじゃないですか?」みたいな使い方が出来ます。
「いってこい」は、「行って」と「来い」という二つの言葉を言うするように発音します。「行ってこい」(命令調)ではなく、「行って、来い」といった感じです。
これも、「トントン」とほぼ同じ意味なのですが、意味合いとしては、一つの仕訳を見ると間違っているように見えるけれども、その後の会計処理を考慮すれば、結果として、正しい会計処理になっていることだと理解しています。
これらは、先輩調査官と税理士が話しているのを横で聞いていて、話の流れから意味は想像できたのですが、「どっこい」が曲者でした。
「どっこい」は、量が同じくらいと言う意味で使われているように覚えているのですが、この記事を書いている時点で、「どっこい」をキーワードにしてネットで検索をしてみたところ、残念なことに、私の理解の「どっこい」はヒットしませんでした。
(もしかして、間違って理解してしまっている??)
たぶん「どっこいどっこい」から来ているのだと思います。
「どっこいどっこい」で検索をすると、私の理解に近しい説明が出てきました。
(よかったです。安心。)
英語で会計用語
監査法人では、なぜかところどころ会計用語が英語になります。
総勘定元帳が「GL」
合計残高試算表が「TB」
販管費が「SGA」
といった感じです。
GLって「General Ledger」の略なのですが、略語でしか使わないのでなかなか身につきません。
勉強のために「Ledger」を辞書で調べてみたところ、「台帳」を意味するそうです。
(これできっと記憶に定着してくれると思います。)
GLとTBはまだ略語として成り立っているのですが、SGA(「Selling, General, and Administrative expense」)については、個人的には、「販管費」と言った方が短くて言いやすいんじゃなかろうかとずっと思っています。
「販管費」がもともと略語ですし。
別途積立金を出してください
この記事を書いていて、ふと、思い出したのですが、とある調査官が、法人税の申告書の別表5(1)に「別途積立金」と記載があったので、調査先で
「『別途積立金』を出してください」
と質問したところ、簿外預金が出てきたという話を、税務署にいた頃に聞いたことがあります。
そういえば、最近めっきり「別途積立金」を見ることがなくなりましたね。
(利益処分案の頃の古い実務を少し懐かしんでみたりする。)
日々精進。