節税のために中古車を購入する
数年前に賑わった情報のようで今更ですが、
「中古車を購入すると節税になる」
という情報にあたりました。
4年落ちの中古車だと耐用年数を簡便法で見積もることで、新車に比べて償却期間がかなり短くすることができますという情報です。
良し悪しは措いておいて、
ネットの情報をいろいろと見てみますと、
原則法に触れていない、
もしくは、触れていても
「実務では原則法は使いません」
と説明している情報ばかりだったのが少し気になりました。
中古資産の耐用年数の規定
中古資産の耐用年数は下記の通り定められています(不要な箇所は削除しています。以下同じ。)。
減価償却資産の耐用年数等に関する省令
(中古資産の耐用年数等)
第三条 法人において事業の用に供された法人税法施行令第十三条各号(減価償却資産の範囲)に掲げる資産の取得をしてこれを法人の事業の用に供した場合における当該資産の耐用年数は、前二条の規定にかかわらず、次に掲げる年数によることができる。
一 当該資産をその用に供した時以後の使用可能期間の年数
二 次に掲げる資産(別表第一、別表第二、別表第五又は別表第六に掲げる減価償却資産であつて、前号の年数を見積もることが困難なものに限る。)の区分に応じそれぞれ次に定める年数(その年数が二年に満たないときは、これを二年とする。)
イ 法定耐用年数(第一条第一項(一般の減価償却資産の耐用年数)に規定する耐用年数をいう。以下この号において同じ。)の全部を経過した資産 当該資産の法定耐用年数の百分の二十に相当する年数
ロ 法定耐用年数の一部を経過した資産 当該資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の百分の二十に相当する年数を加算した年数
そして耐用年数取扱関係通達において、下記の通り定められています。
(中古資産の耐用年数の見積りが困難な場合)
1-5-4 省令第3条第1項第2号に規定する「前号の年数を見積もることが困難なもの」とは、その見積りのために必要な資料がないため技術者等が積極的に特別の調査をしなければならないこと又は耐用年数の見積りに多額の費用を要すると認められることにより使用可能期間の年数を見積もることが困難な減価償却資産をいう。(平10年課法2-7「一」により追加)
まず、耐用年数の見積もりは
「しなければならない」
ではなく、
「前二条の規定にかかわらず、次に掲げる年数によることができる」
とされているだけです。
「できる」です。
そして、見積りにあたって、簡便法が使えるのは
「年数を見積もることが困難なものに限る。」
とされています。
どんな場合でも無条件に使えるわけではありません。
さらに、通達において
「前号の年数を見積もることが困難なもの」とは、
「その見積りのために必要な資料がないため技術者等が積極的に特別の調査をしなければならないこと又は耐用年数の見積りに多額の費用を要すると認められること」
とされています。
積極的に簡便法を認めているわけではないと思います。
中古車の耐用年数の見積もりって本当に
「前号の年数を見積もることが困難なもの」
にあたるのでしょうか?
税務調査
私が税務調査をしていた頃に、審理専門官からこの通達の取り扱いについて厳しく指摘を受けたことがあります。
「村上君。原則は見積りだよ。簡便法を使える状況にあることをしっかり税務調査で確認した?」
と強い口調で注意されました。
仮に税務調査で何からの方法で見積もった年数で否認されたとして、国税不服審判所や裁判所で争っている場面で、
「実務では原則法は使いません!!」
なんて主張しても、
「いや、実務の話をしているんではなくて、、、、」
となってしまうように思います。
実務面の説明も大切だとは思いますが、
正面切って、
「実務では原則法は使いません」
と情報を発信できるのって、すごいなと思います。
アドバイスを受けた納税者の方が、この情報を信じて中古車を購入して、その後の税務調査で簡便法が否認された場合に、なんて、説明するのでしょうか。。
実際にアドバイスするときって、
「理論的には○○で、課税される可能性があります。ただし、実務的には△△です。実際に行うか否かは、会社判断ですので、理論と実務、影響金額などのもろもろを考慮したうえでご検討いただいた方が良いように思います。」
とお伝えするのではないかと思います。
「税務調査で否認された事案をそもそも聞いたことがない」
といったことを言われてしまいそうですが、償却費として損金算入できる金額はトータルで見ると変わらずで、積極的に否認するにしても手間がかかる割に金額が小さいので、ほったらかしにされているだけのようにも思います(真剣に調べたことがありませんが、本当に否認された事案って存在しないのでしょうか?)。
素人の方がこのような情報を書かれているのを見ても、
「まぁ、しょうがないか、、」
とも思えるのですが、プロの方がこの情報を自信満々に書かれているのを見て、
「なんだかなぁ、、、、」
という気持ちになりました。
日々精進。