CPD
公認会計士登録をすると、毎年、一定数の研修を受講する必要があります。
これまでは、CPEといっていたのですが、いつの間にかCPDになっていました。
それぞれは、下記の略語のようです。
CPE (Continuing Professional Education)
CPD (Continuing Professional Development)
内部監査のベテランが講師
e-learningで研修を受講しているのですが、先日受講した不正対策に関する研修があたりでした。
大手企業で、長く内部監査をされていた方が講師だったのですが、ご自身の経験に基づいてお話して下さるのも良かったのですが、なによりも、内部監査に対して常々感じていたことを、ずばりおっしゃってくださっていて、すごく共感できました。
そうですよね~というのが感想
内部監査(内部統制監査)って、
「とりあえず3点セット作って、RCM(リスクコントロールマトリクス)にそって、毎期、手続きをすればいいんでしょ?」
という風にとらえられがちなように思っています。
(念のためですが、内部監査と内部統制監査は違うとか細かな点は無視して書きます。)
監査法人で会計監査をしていた頃に、内部統制の担当者の方に、ご自身が所属している会社の業界について明るいか?を聞いてみると、転職してきて1年目だったりするわけです。
会計士だったり、会計監査対応を経験されていた方だと、形式的な面はしっかりと対応できるのだと思います。
でも、実質的な面からの対応って、その業界に明るい方(その業界が好きな方)でないと難しいのではないかと思っています。
せっかくコストをかけて内部監査をしているので、それで形式面だけを満たすのって、
「なんか、もったいないな。」
とも感じます。
ビジネスを理解していなかった事例
研修のなかで紹介されていた事例に、会社が行っているビジネスを理解していれば容易に不正を発見できたはずだというものがありました。
日本からアジア諸国に食べ物を輸出して販売している会社の事例だったのですが、現地の在外子会社が製品在庫を水増ししていたそうです。
この会社が輸出して販売していた日本の食品は、現地のアジア諸国で製造しても、日本のような品質とならないので、わざわざ日本から輸出して販売していたそうです。
そして、輸出先が高温多湿なアジア諸国なので、現地国に輸入した後はさっさと売り切らないと商品としての価値がなくなる(湿気っておいしくなくなる)ものだったそうで、会社のビジネス戦略として、日本から輸出した後は、できるだけ早く売り切る方針をとっていたそうです。
なので、
在庫が積みあがっていく=商品として価値がないものが積みあがっている
ということ意味します。
会社がとっているビジネス戦略を理解し、その観点から見れば、在庫が増え続けていることがおかしいと気づけたはずなのですが、日本の親会社の人たちは、子会社から在庫が増えている説明を聞いて、特に疑問を持たなかったそうです(後に、監査役が在庫が増え続けることに異常性を察知し、判明。)。
現地とのコミュニケーションがあまりうまくいっていなかったということも理由として挙げられていましたが、確かに、ビジネスを理解していれば、気づけたのではないかと感じました。
米国へ行って、できるだけ指摘を挙げてきて欲しい
独立した会計士向けに、お仕事を紹介するサービスを提供している会社がありまして、村上も一社登録しています。
登録の目的はお仕事を得るためではなく、定期的に案件情報が来るので、
- どういった業務に需要があるのか、
- 報酬はいくらくらいなのか(マージンが抜かれてるので、それを踏まえつつ)
といった情報を得るためです。
過去に案内が来た案件で、
「英語業務で、在外米国子会社の内部統制監査をして欲しい。」
というものがありました。
どうやら、英語業務は実績作りにもってこいということで、独立会計士達に人気があるようなのですが、業務内容とレベルに比して、報酬が明らかに低い(日本で行う内部統制監査とほぼどっこいか、それ以下)状況でした。
「英語を単に話せるというのと、適切にコミュニケーションが取れるということは大きく違うのになぁ。」
と思いながら案件の概要を読んでいたのですが、その案内に、
「出来る限り現地で指摘事項を発見してきて欲しい。」
というご要望が書かれていました。
わざわざ現地まで行って、
「何もありませんでした。」
と帰ってこられても困るのもごもっともなのですが、そのように書かれてしまうと、重箱の隅をつつくようなことをし出す人が出てきやしないかと少し不安になりました。
(重箱の隅をつつくような指摘は内部監査の本質ではないと思っています。)
また、
「会社の事業を知らない外部の人間に、そんなことが果たして可能なんだろうか?」
という疑問を持ちました。
この案件、受けちゃった人、地獄を見ているんじゃないでしょうか。
まったく知らない会社の棚卸立ち合い
監査法人に在籍していた頃、むちゃぶりが普通にある部門に所属していました。
いろいろなむちゃぶりを楽しんでいたのですが、
「これは無理だー」
と思ったのが、まったく知らない会社の棚卸の立ち会いです。
主任曰く、
「子会社がありすぎて、人手が足りないので、たまたまその日が空いている人をアサインした。」
とのことでした。
事前に過去の監査調書を確認するなどして臨みましたが、やはり頓珍漢な対応をしてしまいました。
ざっくり言うと、物を仕入れて販売するというビジネスをしている会社(子会社)だったのですが、棚卸立ち合いをしていて、
「過去に比べて商品数(在庫数量)が多くなってきた。」
というお話をいただいて、
「商いが広がっているということですので、良いことですね。」
と返したところ、担当者の方が笑っていました。
どうやら、その会社の強みは在庫を持たない仕組みだったようで、在庫数量が増えてしまっている=その会社の強みがなくなってきているということだったようです。
事前に、監査調書を読んでいっても、この程度です。
棚卸立ち合いの手続書で求められる事項はしっかりと対応しましたが、本質的な立ち合いができたかというと、まったくそんなことはないと思っています。
現に、担当者の方、結構ウケてましたし。
(村上さん、何言ってるんですか?ぷぷっみたいな感じでした。)
求められるからやっているに過ぎないという側面もありけり
監査法人にいた頃から、感じているのですが、いうても、内部監査って、法律などで求められているからやっているに過ぎないという側面もあるように思っています。
どうせやるなら、意味のあることをやりましょうよと考えるタイプなのですが、でも、実際のところは、そういった考えの方が大半だったりするのかもしれませんね。
日々精進。