消費税の経理処理
ご存じのとおり、消費税の経理処理には税抜き経理と税込み経理があります。
消費税の免税事業者(消費税の納税義務がない事業者)である場合には税込み経理を、課税事業者(消費税の納税義務がある事業者)である場合には税抜き経理を選ぶのが一般的だと思われます。
ところが、
「IPO準備会社に対しては免税事業者であったとしても、税抜き経理をお願いしている」
という話を知り合いの会計士から聞きました。
その理由は
「後の事業年度において課税事業者となり税抜き経理へ変更した場合に、税込み経理の事業年度と税抜き経理の事業年度の比較可能性が担保できないから。」
とのこと。
差額の処理とタイミング
なるほど、と思い、
「では、仮受消費税と仮払消費税の差額はどのように処理すべきか?」
という議論に発展したのですが、
「雑損益勘定などで営業外損益に計上することとなるのではないか」
という結論に至りました。
さらに、
「仮に収益の認識時点が税務と会計で相違していた場合(税務の方が収益認識が早い場合)に、その収益に係る仮受消費税はいつ雑収入に振り替えられるのか?」
という疑問が生じ、議論をしたのですが、
「免税事業者であることにより、仮受消費税を納税する必要がないので、免税事業者に該当する課税期間(事業年度)に雑収入として計上できるのではないか」
という結論に至りました。
IPO準備会社では不思議な議論が起きがちです
簡単なようで、実は少し複雑、かつ、おそらくほとんど誰も気にしない論点だと思われますが、IPO準備会社特有の論点であり(免税事業者に該当するようなスタートアップ企業であり、かつ、売上などがまだほぼないような事業年度でしか議論にならないため)、税務と会計の発想が絡み合っていて個人的に面白いと感じる論点でした。
ちなみに、わざわざ免税事業者に該当する期間の仕訳を一つ一つ税抜きにする必要はないように思われ、開示の組替えなどで、えいやっと税抜処理(消費税がかからない費用で代表的なものは給与や社会保険料くらいで、勘定科目単位で把握可能)すれば、実務的にはいいのではないかと思っています。
日々精進。