2023年1月19日(木)の日経新聞の記事
2023年1月19日(木)の日経新聞の記事に、「バンダイナムコHD、6億円着服で提訴」という記事がありました。
記事の内容によると、元社員の方が社用スマートフォンなどのモバイル端末を無断で転売することで利益を着服していたとのことでした。
(職業柄こういった内容の記事に目が行ってしまいます。)
資産の現物管理は大切だけれども
資産の現物管理って、会社の物を勝手に使用されたりしないようにするために、行うものだと思っていますが、そうはいっても、中小企業では、減価償却の計算をしたり、除売却の会計処理のために行われているというのが一般的な理解なようにも思います。
なので、固定資産として会計税務上の管理が必要ではない物(少額減価償却資産や一括償却資産、10万円未満の備品の購入など。)については、管理されていないのが実情だと思います。
監査法人にいた頃に、IPO支援をしていたのですが、
「固定資産の管理ってしていますか?たとえば、購入後未使用のPCはどうやって管理されていますか?」
といった質問をすると、たいてい、
「えっ、、、資産計上していない物を、なんで管理する必要があるんですか?」
みたいな雰囲気になります。
(一応は、管理番号シールを備品などに貼って、定期的に管理データと実物を照合する必要があると言われています。実際にできるか否かは措いておいて。)
ジュエリーなどの宝飾品などで高価で転売が容易に可能なものであれば、現物管理の重要性は認識されていると思うのですが、PCなどになると、
「誰が勝手に持って行って売るんだよ?」
というのが一般的な認識だと思いますし、私が会社の従業員だったら同じことを考えるとも思います。
言うは易しってやつですね。すみません。
性善説か性悪説か
おそらく、性善説で物事を考えるのが一般的なのだと思うのですが、税務署で中小企業の税務調査をしていると、いろいろな事案を見るので、性悪説で物事を考えるようになります。
たとえば、DMをたくさん発送する業種で、切手代が異常に高い場合は、切手の転売が起こりえますし(料金後納にするなどいろいろ手立てはあると思うのですが、なぜか起こります。)、高額な印紙を頻繁に取り扱う業種の場合も、金庫などで印紙を管理するか、納付計器を使用しないと転売が起こりえます。
宝石なんかも行方不明になったりします。
宝石商を営んでいる社長から、
「宝石が好きという方は、従業員として採用しないようにしている。」
というお話をお聞きしたことがあります。
こういった方は時間が経つと、会社の宝石が自分の物にだんだんと見えて来てしまうから、とのことでした。
2名体制で宝石を管理する体制にしていても、グルになられることもある(他の店舗へ貸し出したとシステム上処理しておき、実際は持ち逃げ。)ようです。
肉がトン単位で行方不明になった事案に遭遇したこともあります。
トン単位の肉はどこへ行ってしまったのでしょうか。
会社規模が大きくなるほど管理が大変になっていく
今回の記事で驚いたのは、転売していたものが「スマートフォンなどのモバイル端末」と、一つあたりがそこまで高価だとは思われない物の転売だった点です。
(よく考えてみると、中古品のお店で売っていますね。だから価値があるんですね、きっと。売ったことがないので勘所がありませんが。)
また、横領していた期間は、IR情報によると「2015年4月頃から2022年4月頃までの間」とのことですが、それにしても、一従業員の横領額にしては多額だなと感じました。
(損害賠償請求額が6億円ですので、横領額=損害賠償請求額ではないということかもしれません。)
2023011820HPE794A820BNEE6A188E4BBB6E383AAE383AAE38.pdf (bandainamco.co.jp)
数千万円くらいであれば、見たことがあるのですが、億はちょっとびっくりです。
(ふと、書いていて思ったのですが、これって会社が購入していた備品を勝手に持ち出して転売していたのではなくて、通常分の購入に上乗せして発注して、そのまま、ほかに転売していたというとかもしれないですね。う~ん、気になります。)
資産の現物管理って、会社の規模が大きくなればなるほど、対象となる物の範囲も数も増えて、かなり大変なことになります。
IR情報によると、「管理システムに登録」とありましたので、管理する仕組みはあったように思われるのですが、それでも、こういったことは残念ながら起きてしまうようです。
公益財団法人の会計監査をお手伝いしたときに、会議室用の長机一つ一つに管理番号を振って、シールを貼って管理しているのを見たことがあるのですが、資産として登録するまではできても、毎期毎期、資産の実物チェックまでは、工数的に不可能だろうなと思ったことを思い出しました。
あるべきと、実際のところ。不正を防ぐためにどこまですべきなのか。防ぐのではなく、そういった動機付けをさせないようにすべきなのか、など、答えがないことだとは思いますが、いろいろと考えさせられました。
日々精進。