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資産除去債務をあらためて勉強してみる

会計のはなし

税法決算から会社法決算へ

先日、とある会社の税法決算から会社法決算への変更のお手伝いをしました。

IPO支援をしていた時に、課題調査と期首残高調査を行うのですが、その中で対応していたことをそのままやればいいので、勘所はあるのですが、改めて会計基準を読んでみるのもいいなと思い、少し復習をしてみました。

資産除去債務ってなに?

資産除去債務って何をしているのかというと、オフィスの退去時に行う原状回復工事の費用をあらかじめ見積もって、その金額を資産と負債に計上するということをしています。
(工場などの方が、影響額が大きいと思われますし、重要性も高いので事例としては良いと思いますが、都区内の会社の支援をしていても、実務であまり当たらないので、ここでは割愛します。)

もう少し正確に言うと、原状回復工事の費用を見積もって、それを割引計算した金額を資産除去債務として負債計上し、見合いの金額を有形固定資産として資産計上します。

割引計算や計上後の会計処理などの説明は、EYなどの大手監査法人さんが丁寧に説明してくれていますので、そちらを参考にするといいと思います。
(EYの説明が個人的にはおすすめです。説明が丁寧ですし、専門家向け過ぎじゃない感じの、良い頃合いをキープしているイメージです。)

見積もりはどうやるのか

言うは易しで、

「見積もりはどうやるのか?」

という疑問があるかと思いますが、これから別の事務所に移るということであれば、内装工事を発注する業者さんに、退去時の原状回復工事のざっくり見積もりの作成をお願いするか、あとは、不動産の管理会社も対応してくれるような話を聞いたことがあります。
(無償で、しかも、遠い将来の見積もりを出させられる業者さんたちが、この対応にイラついていないか、いつも気になっています。)

あとは、過去の実績を使うという方法もあります。

以前の事務所の面積で、実際にかかった原状回復費用を割って、㎡あたりの単価を算出して、その㎡単価を使って、新しい事務所の原状回復費用を見積もるということです。

原状回復費用って、もちろん、工事内容によるとは思いますが、あくまで見積りですので、これくらいの簡便な対応でいいのではないかと思います。

会計監査ではバックテストといって、見積っていた金額と実績値とを比べることをしているのですが、資産除去債務についていうと、資材や人工の単価の高騰だったりといった、到底見積不可能な外的要因が理由となって、見積額が実績値から大きく外れることが結構あったように記憶しています。

なので、かなり厳密に見積もってみたとしても、結果として外すことが多いと思っています。

もちろん、この場合は、

「当初の見積もりは適切だったのか?」

みたいな議論に、会計監査上なりえるのですが、言うても、オフィスの原状回復費用(しかも見積額と実績値の差額)なので、金額的な重要性がないという結論となることが一般的なのではないかと思います。
(工場とかって、金額も大きくなると思いますので、結構厳密にやっていたりするんですかね。やったことがないので勘所がありません。)

簡便法は簡便か?

先に述べた会計処理は、原則的な会計処理なのですが、建物賃貸借契約に関連して敷金を支出している場合には、敷金のうち、原状回復工事に充てられるであろう金額を見積もって、その金額を、平均的な入居期間で費用処理することも認められています。
(敷金をマイナスして、敷金償却などで費用処理。)

この方法は簡便法と言われていますが、個人的には全然簡便ではないと思っています。

  1. 敷金として支払った金額が会計上わからなくなる(退去時の仕訳がややこしくなる)
  2. 「平均的な入居期間」という概念が謎

1については、敷金勘定に補助科目を設定するなどすれば、対応可能だとは思うのですが、退去時の仕訳がカオスになります。

「えっと、もともとの敷金がいくらで、実際にかかった工事費がいくらで、費用処理していたのが、この金額だから~。」

みたいな状況ですね。

多店舗小売りで、この処理をすると、間違いなく、わけわかめんになります。

原則的な会計処理を採用した場合であっても、固定資産台帳の金額と、BSの有形固定資産の金額が一致しない現象が起きますが、個人的にはこっちの方が管理しやすいなぁと感じています。

2については、監査法人に在籍していた時にクライアントから受けた質問です。

「平均的な入居期間」ってどうやって出すんでしょうかね。

前の事務所に20年いたとして、それ以外に実績がない場合に、平均20年として計算できるかと言うとそれはないと思いますし、根拠もなく言い切るくらいしか解を思いつきません。

ちなみに会計基準の設例では、唐突に

「Z社の同種の賃貸建物等への平均的な入居期間(5年)で費用配分することとした。」

と書かれているだけです。

この会計基準の導入の頃のASBJの議事録を遡れば、どこかに書いてあるのかもしれませんが、そこまでの会計オタクではないので、調べることはしないことにしました。

きっと、謎に言い切るがプラクティスなのではないかと思います。
(違ったらごめんなさい。)

税効果

資産除去債務のような会計のあるべき姿を追い求めている感じが個人的に好きなのですが、これを頑なに税務は拒否していますので、会計処理がより複雑になってしまうことがよくあります。

資産除去債務の税効果がその一つだと思っています。

資産除去債務の会計処理による資産の追加計上額も負債の追加計上額も、単なる将来の見積もり費用に過ぎませんので、税務上はいずれも否認する(なかったことにする)必要があります。

税務上否認されることとなりますので、資産除去債務を計上した段階では、税務と会計で帳簿価額に差が生じている状況なのですが、実際の退去時の原状回復工事で、実際の工事費用が税務上も損金として認められることとなりますので、税効果会計の対象となる一時差異に該当します。
(永久に差が解消しない差異を、永久差異といいまして(交際費の損金不算入などがこれ)、こっちは税効果会計の対象となりません。会計基準などを読むと、減価償却を通じて差異が解消するとも説明すべきなのかもしれませんが、ややこしくなるだけなので割愛しています。)

一時差異に該当したものがすべて、繰延税金資産として計上されるかと言うとそうではなく、回収可能性(ざっくりいうと、実際に税務調整が入るときに課税所得が生じているかと言うことです。)を検討する必要があります。

これも結構手間でして、詳細はまたもや大手監査法人さんの解説に依拠しますが、ざっくりというと、繰延税金資産は将来の減価償却の金額などを見積もって、それに応じて一定額を資産計上することとなります。

繰延税金負債は、負債なので、網羅性の観点から、全額が負債計上されることとなります。
(最終的には繰延税金資産と相殺された金額で財務諸表に表示されます。)

このように、繰延税金資産と負債で計上できる金額が異なることとなります。
(少し調べたところ、ここはいろいろな考え方があるようです。私は差が生じえると考えて会計監査をしていました。)

資産除去債務の会計処理は、資産と負債の両建てなので、BSが両膨らみするだけかと思いきや、業績があまりよくない会社などの場合は、資産の計上額よりも負債の計上額が大きくなってしまうことがあるということです。

オフィスの原状回復費用の追加計上くらいであれば、そこまでインパクトも大きくないのだと思いますが、多店舗の小売業なんかは結構大変なこと(金額的にも管理のための工数的にも。)になってしまうこともあるようです。

会計の説明なのに、数値も具体的な仕訳も一切使わずに書いたのと、割と端折っているので、しっかりとした理解には全く資さないと思いますが、何かの参考になれば幸いです。

日々精進。

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