コラム

株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブック~会計監査を受ける前に準備しておきたいポイント~

「株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブック」

日本公認会計士協会から「株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブック~会計監査を受ける前に準備しておきたいポイント~」が公表されているが、金融庁「株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会報告書」(2020年3月27日)を踏まえて改訂されていた。
https://jicpa.or.jp/news/information/IPO-Guidebook.pdf

IPOまでの標準的なスケジュール(N-2期以前からN期まで)など、IPOのための会計監査を受けるにあたって知っておいた方が良い情報が図示されており、また、会計監査を受けようとしたときの事前準備のポイントと例示などの各論も盛り込まれており、とても良い資料だと感じている。

IPO監査をやっていた中で感じていたこと

監査法人でIPO支援をやっていた際に課題調査(IPOにあたって会計監査の面から課題となる事項を調査すること)を担当したが、意外にも棚卸資産管理や資産負債の管理などが(上場に当たって求められるレベルに達していないという意味で)適切に行われていない会社が多かったように感じている。

IPOを目指す前の会社は一般的には税務決算によっていることから、棚卸資産の管理でいうと、棚卸資産の計上漏れを防ぐという観点からの対応のみであったり(売上原価の過大計上につながるため)、そもそも実地棚卸がされていない(帳簿上であるべき残高を算定するのみで棚差の把握と理由解明等の管理を行っていない。)ことがほとんどで、稀に実地棚卸をしていたとしても、ロケーションマップがない、棚卸票の管理の仕方に問題があるなど(通し番号で管理するなどして、棚卸票の管理が必要)、適切な制度が整備されていなかった。

その他、会計上の見積もりを検討する制度が未整備となっていることもほとんどで、こちらも税務決算によっている場合、見積もり項目は基本的にはすべて税務上損金算入が認められないことから、わざわざ工数をかけて対応をする必要もないため、未整備となっているのではないかと考えている。

賞与引当金や退職給付引当金は金額的な重要性も大きく影響が大きいことから、税務決算を行っている会社でも計上している決算書をたまに見かけたが、それでも賞与引当金に伴う社会保険料の会計処理が行われていなかったり、退職給付引当金も簡便法の処理であるなど、そのままで会計監査でOKと判断されるような処理ではなかったように思う。

IPOのための会計監査を受けるにあたって

IPOのための会計監査を受ける会社のほとんどが、急成長している企業であることから、企業規模拡大のスピードに管理部員が対応しきれず、その結果、社内制度がそもそもなかったり、形骸化してしまっていることが多いように感じている。

そのこと自体はしょうがない面もあると思うが、準備のポイントとして挙げられている事項(特に原価計算制度)はえいやっとやることですぐに改善できるようなものではなく、長い年月をかけて仕組化していく必要があるため、IPOのための会計監査が始まる前から外部の専門家に業務委託をするなどして、早めの段階から取り組んでおいた方が良いのではないかと考えている。

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