コラム

国税職員としての質問対応との違い

質問対応の違い

国税組織を出てから、いろいろなことに気付かされるが、その中でもよく感じることが、国税職員としての質問対応と専門家(会計士・税理士)としての質問対応の違いである。

国税職員としての質問対応は、結論(課税されるか否かを回答すること(もちろん留保文言は付しつつ))が求められ、専門家としての質問対応は、情報を整理して、クライアントが適切な意思決定ができるように手助けをすることが求められるという点で違うと感じている。

国税職員としての質問対応

国税職員として税務署に勤務していた時に、納税者からの税務相談を受けることがあったが、相談にいらっしゃった段階で、情報の整理等は完了しており、国税職員が回答にあたって確認したいと思うような資料は、あらかじめ揃えられていたことが多かったように感じている。

取引にどのような論点があるのかが明確になっており、当該論点に関するリサーチは完了、リサーチによる収集資料も参考資料として添付されているという状態で、税務に関する質問にいらっしゃったというよりかは、
「リサーチは済んでいます。納税者が望んでいるのはあなたの知識ではなく、この質問ペーパーに記載されている通りの答えです。」
と言わんばかりのものであった。

(推測ではあるが)国税OBが関与している場合などは、相談資料に記載されている情報を記載されている順番通りに決議書(一般企業でいうところ稟議書)にそのまま書き写すと決議書が出来上がってしまうような相談資料となっていることもあった(決議書を作成する段階で気づかされ、非常に驚いた記憶がある。)。

もちろんこのような相談ばかりではなく、相談者自身も論点を把握できていないような、漠とした状態で税務相談をお受けする場合もあったが、そういった場合は、「もうちょっと具体的な資料を揃えて情報を整理されてからご相談に来ていただかないと、回答は出来かねます」という対応をしていた(というかせざるを得なかった。)。

あらかじめ情報と資料が整理されている状況で相談を受けることができる点と、そういう状況になかった場合に質問に対する回答を差し控えることができる点について、今になって思うと、税務署だからできる対応だなぁと感じる。

専門家(会計士・税理士)としての質問対応

専門家としてクライアントから質問をうける場合は、むしろ、非常にざっくりした情報しかない状態の方が多いように感じている。

専門家に相談を行うタイミングが、クライアントが取引を行うべきか否かの検討を行っている段階であることから、取引の詳細は未定という状況であったり、メインで取引の検討を行っているは事業部の担当者の方で、この事業部の担当者の方が経理部の担当者の方に質問をしている場合など、相談者(経理部の方)が取引内容を詳細に把握していないといった状況(情報との距離がある状況)であったりするためではないかと感じている。

上記のような漠とした状態で質問を受けたとしても、税務署にいた頃のように、具体的ではないからという理由で回答をしないわけにもいかず、まずは、現在はどの段階にあるのか(取引は実施済みか、それとも取引実行の可否を検討している段階か)、取引形態についてどのような候補が挙げられているのか(第三者取引かグループ間取引か、売買金額はどのようにして決めるのかなど)、会計や税務の観点以外で考慮すべき事項は何かあるか(会社法や金商法の観点など)といったことを質問して検討材料を収集することから始める。

そして、把握した情報を基にして、必要に応じて仮定を置くなどしつつ、クライアントが意思決定を行うにあたって必要となる情報(たとえば、目的を達成するにあたってどのような取引形態が考えられるのか、取引形態ごとの課税関係はどのようになるのか、専門書籍での解説と実際の運用上の取り扱いの相違点(温度感)など)を整理してお伝えする。

ここまでくれば、だいたいの案件では、「あとはこちらでいただいた情報を基に検討を行います」といった回答が来ることとなる。

この対応に慣れていない頃は、情報が少なすぎて結論を出せないよと思っていたが、とある先輩から、結論を出すのはクライアントで、その結論を出すための情報を整理するのが、専門家の役目だと考えていると教えられた。

それからは結論を出すことではなく、情報を整理して、クライアントが適切な意思決定ができるように手助けをすることを心掛けるようにしている。

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