コラム

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ソフトウェアの資産計上

会計のはなし

税務調査による指摘

税務調査に関する相談を受けるなかで、相談を受けることが多いと感じる論点としてソフトウェアの資産計上がある。
相談内容は、アプリの開発など自社で利用する目的のソフトウェアを開発するためにかかったコストのうち、どの範囲のコストをソフトウェアとして資産計上すべきかというものである。

ソフトウェアの資産計上の精度は、会社によってまちまちであるように感じており、外部委託により開発した際は、会社の規模に関わらず、資産計上するという実務が比較的浸透しているように感じるものの、自社の従業員が開発した際のコスト(人件費等)については、中小企業においては資産計上するという実務はあまり浸透していないように感じている。
仮に資産計上していたとしても直接費(開発にかかわった方の人件費など)のみであることが多い(直接原価計算によっている)。

当該論点について、会社の規模がそこまで大きくない時には、税務調査において指摘を受けることはあまりないが、その理由として、そもそも課税所得が生じていないため、調査官にとって指摘をするインセンティブがあまりないことや、調査官が原価計算に苦手意識をもっており、この論点を避けがちといったことがあるようである。

ところが、会社の規模が大きくなってくることで、課税所得が経常的に出るようになり、調査官としても当該論点を指摘するインセンティブが生じること、税務調査を行う部署が税務署から国税局となり、税務署に比べると原価計算の論点を得意とする調査官が増えることなどから、当該論点が急浮上することとなる。

いずれは償却費として損金算入される(期ズレ)とはいえ、否認額も多額となりがちで、本税とは別に加算税も支払う必要があることから、指摘を受けた段階で、なぜこれまで資産計上してこなかったんだ!?という議論に発展してしまうようである。

会計監査

ご相談にいらしゃった経理部のご担当者の方に、
「監査法人とソフトウェアの資産計上について議論されたことはありますか?」
とお聞きするようにしているが、
「議論をした結果、監査法人からは資産計上が難しい」
とアドバイスを受けたといった内容の回答が返ってくることが多い。

会計上、ソフトウェア開発にかかるコストの資産計上について「将来の収益獲得が確実なもの」についてのみ資産計上を認め、「将来の収益獲得が不明なもの」については、資産計上できないという取り扱いとなっており、原則として資産計上すべきとしている税務上の取り扱いと違いが生じている。

監査法人としては、「将来の収益獲得が確実」であるということについての心証を得る必要があり、仮にいったんは資産計上をOKとしたとしても、ソフトウェアを使用している事業の業績が芳しくない場合などは、減損の検討を行う必要があることから、費用処理をするように促す傾向があるように感じている。

原価計算の負担

経理部のご担当者の方に
「この論点についてご存じであったか?ご存じであった場合、なぜこれまで資産計上していなかったのか?」
という点も併せて質問をするようにしているが、
「ソフトウェアの原価計算は実務上かなりの工数を要し、手間がかかる割には、会計上は費用処理が求められ、メリットが感じられなかった」「これまでの税務調査では指摘を受けたことがなかったので、これまでの計算(直接原価計算)で問題ないと理解していた」
といった回答が返ってくることが多い。

監査法人在籍時に、当該論点について上場準備会社である監査クライアントと議論をしたことがあるが、確かにマネージャーなどの管理者層(間接費)の方は、複数案件を同時進行で対応をしていることから、時間単位でプロジェクトに要した時間を把握することが実務上かなり難しく、また、原価計算の導入等の対応は経理部のみで完結する話ではないため、開発部門の方などの多くの方のご協力を得る必要があり、その負担はかなりのものであると想像できた。

その割には、結局、当該事業は赤字なので資産計上は認められませんとなってしまうとなると、いったい何のためにこの作業を頑張ってきたんだ?対応する必要があるのか?と感じてしまうことに強く同感できる。

まして、上場準備会社は人的リソースが限られ、かつ、システマチックな手段により解決しようにも、会計のためだけに大切な資金を投下するといったことは正直難しいのではないかと思っている。

実務における対応

当該論点について、開発にかかったコストのうち30%を資産計上するという処理をしている事例を見たことがある。なぜ、そのような処理をしているのか確認してみたところ、税務調査で指摘を受け、えいやっと「30%を資産計上しましょう」となったとのことであった。
正しいか否かは措いておくとして、税務調査で否認を受けないようにするための対応としては、このような対応もありなのではないかと思っている(30%が適切であるかも然り)。

ただし、税務調査で否認されないためという目線ではなく、会社の業績把握にとって必要であるか否かという目線で、当該論点に対する対応方針を決める必要がある点にはご留意いただきたい。

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