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【独立開業】ずっとマイノリティでいると、バランス感覚が身につく

お仕事のはなし

バランス感覚って重要だと思います

これまで、国税→監査法人→法律事務所を転々としてきましたが、ずっとマイノリティだったので、バランス感覚が身についたように思っています。

クライアントからバランス感覚をお褒めいただくことがよくあるので、ビジネスをするにおいて、バランス感覚って重要だなと思います。

会計を重んじる国税職員

国税にいたときは、会計を重んじる謎の職員でした。

法人税法(第22条4項)は下記の通り、税法に定めていること以外は会計処理の基準に従って計算されるとされていますので、

「そうか、まずは会計処理の基準を理解して、その次のステップとして法人税法を学ぶんだな」

と思って、会計の勉強したので、たとえば統括官と税務上の取り扱いを話す時は、まずは会計処理の話をして、そこから税務上どのような取り扱いとなるのかを話すようにしていました。

「第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。」

こんな職員は相当稀なようでして、
「なんか変なやつ~」
といった雰囲気を出されたことは何度もありますし、

「簿記なんて3級までの知識があれば十分」
といったことをおっしゃっているベテラン調査官もたくさんいらっしゃいました。

簿記3級の知識に法人税法の知識を上乗せすると、基礎工事をほぼ行っていない土地に、家を建てるようなことと同じことなんじゃないかなと思っています。

小さな地震でも家がグラグラ揺らいでとても怖いと思うのですが、それを不安に感じないことに疑問がありますが、疑問を持つこと自体がマイノリティなようでした。

ちなみに、
「簿記3級で大丈夫」
と言っている職員さんは、税法の知識もだいたい持ち合わせていないように思います。

「不正の発見に長けているのでそれでいいんだ」
ということのようですが、彼らの無知に付け込むことで、不正の発見をすることによる追徴税額よりもはるかに多額の税金が、課税漏れとなってしまうこともあるのではないかと思っています。

発生主義で売り上げを計上?

ちなみに一番変なやつと思われた場面が、
「収益認識のタイミングは発生主義ではなく、実現主義だ」
と言ったときでした。

農家でいうと、
・米が収穫できた(「することができる状態になった」かもしれません)タイミングで売上を計上するのが発生主義、
・実際に消費者などに売ったときに売上を計上するのが実現主義で、
・その後に現金を回収したタイミングで売上を計上するのが現金主義
になります(もうだいぶまえに勉強した知識ですので間違っていたらごめんなさい)。

なので、
「発生主義で売上を計上」
と引継ぎ事項に書かれたりしていると、
「いや、実現主義でしょ~」
とか言いたくなるわけです。

最近はどうでもよくなったので、まったくこだわっていませんが。

税務にやたら詳しい新人会計士

次の職場は監査法人だったのですが、国税にいた経歴がありながら、監査法人を転職先に選んだことがマイノリティみたいでして、だいたいの国税OBが税理士法人に行かれるそうです(公認会計士試験の仮面浪人みたいな形で国税に就職された方が、稀に監査法人へ転職されるそうです)。

今度は、税務にやたら詳しい謎の新人会計士になったわけですが、監査を行っていても、どうしても税務の観点からのチェックもしてしまいがちでした。

会計監査における金額感ですと、会計監査上、税務が問題になることってほぼなくて、税務の誤りを気づいたとしても、
「まっ、気にしなくていいんじゃない」
とマネージャーなどから言われてしまうことがよくありました。

クライアントに気づいた事項をお伝えすると喜んでいただけるのですが、自己監査になる恐れがあるので、積極的に間違っているであったり、こういった税務処理であるべきといったことは言えません。

なので、それとな~く、
「顧問税理士先生にこの観点から問い合わせされたほうがいいように思います~」
みたいに、あっているか間違っているかわからないけれども、確認した方がいいですよといった伝え方をしていました。

このやり方、言われた経理部の方からすると、
「ん??どういうこと?なぜにはっきりと言ってくれないんですか?」
となってしまうのと、質問を受けた顧問税理士は間違いを指摘され、かつ、言い方が非常に回りくどい(監査人としての事情を知らないと、責任を押し付けているように見える?)ようで、メールを通じてですが、激怒されたこともあります(クライアントからは感謝されましたが)。

一番困る場面が、会計の議論をするときでした。

税務の知識をすべて頭から消し去って議論しないと、税法の考え方に引っ張られてしまいます。

税法は法的な観点も判断要素にしますが、会計は「経済的実質」という魔法のような言葉で、法的な観点をスキップしていきがちです。

なので、会計の議論をする際は、税法頭のスイッチをOFFにする必要があるのですが、これがめちゃくちゃ大変でした。

監査法人を辞めた後は、監査をやっている同期の会計士と会計の議論をすることで、意見が相違する点=会計と税務の乖離事項を認識することができるので、とても役に立っているのですが、監査法人で会計士として税務の考え方を用いると、「はっ?」となるので注意が必要です。

会計士なんだけれども税務(実務面)にも詳しい若い人

最後の職場は法律事務所です。

弁護士さんたちは法律を当然重んじます。

法律などでは明確にはなっていないけれども、実際の運用でうまくまわっているようなことも世の中たくさんあると思いますが、あるべきを議論するにあたっては、いったんはこれは単なる運用なのであって、法律論ではないということで捨象する必要があります。

なので、法律では○○だけれども、税務調査の場面では△△で運用しているという場合は、△△を無視して、○○のみで話を進める必要があります。

この時が一番カオスだったように思います。

会計士としての頭(大企業向け)、税理士としての頭(中小企業向け)、国税調査官としての頭(実務重視)のうち、どの頭で話すべき場面なのかがわからないと、適切な回答ができません。

なので、
「その会社って上場企業ですか?」
と聞いたり、
「税法の理論の話ですか?実務上の話ですか?」
と聞いたりして、場面を判別していました。

弁護士さんは法律を読むエキスパートですので、村上なんぞに法律の読み方を聞きに来ることはまずなく、実務面の質問に来ているのは確かなのですが、このステップを踏まないで実務上の運用をいきなり回答すると、だいたいのケースで「根拠は?」となり少しやっかいですので、意識的に聞くようにしていました。

聞かれる方からすると、
「いや、そんなのどうでもいいから回答してよっ」
と思うだろうなと思いつつ、また、その雰囲気を感じつつ、過ごしていました。

上記以外だと、クライアントの会議に呼ばれた場合で、クライアントが会計だったり税務の回答をまったく期待していなかった(監査法人や顧問税理士に別途聞けばいいやみたいな感じのときです)のに、会議で会計税務の説明をすることとなったときは、かなり苦痛だったのを記憶しています。

こちらも状況はわかっているので、数ある懸念事項の中でも、さすがにこれを外すとまずいといった論点だけを掻い摘んでお伝えしたりしていたのですが、

クライアント側も、
「法務の話をするぞー」
と会議に臨んでいる状況ですし、

いきなり会計税務の話をされても、
「心の準備できていないし、法律事務所の報酬水準で会計税務の話を聞きたくない」
といった雰囲気を感じる場面などもありました。

同席していた弁護士が雰囲気を読んで、
「まぁ、会計税務の論点なんでね」
みたいな発言をした際には、会議室でただ一人、孤独を味わうこととなります(めちゃくちゃつらいです)。

私が孤独を感じていようがそれはクライアントには関係ないことですので、それでも必死に
「この論点はさすがに抑えておいた方がいいですよ」
とお伝えしていたのですが、その思いが実際に伝わっていたのかは私は知るすべがありません。(これを書いていて、会議室の出席者全員がした、白けた視線を思い出しました。)

マイノリティを経験した者にのみ、マイノリティの気持ちがわかる

クライアントとの会議で、出席者のうち一人がマイノリティなんだなと感じる時があります。

そのような場面に出くわすと、その方のお気持ちがよくわかりますので、その方が何かサジェスチョンされた場合は、本当はもっとたくさんの引っ掛かりポイントがあるけれども、その中でも本当に重要なことを全体に伝えようとしてくれているんだなと感じることができて、その行為に対する感謝の気持ちが湧いてきます。

そのサジェスチョンはさらっと流されがちですが、後々重要な論点となってくることが多いように感じているので、その時点で、その方により詳細にご説明いただくなどして、方針の決定にあたり、考慮するように心がけています。

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