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【税務調査】無申告加算税の非公開裁決事例を読んで

お仕事のはなし

「検証 国税 非公開裁決 情報公開法が開く審判所の扉」

業務が落ち着いているので、いろいろな書籍を読んでいます。

故山本守之先生は、税務行政に対して、いろいろと痛快なコメント(「岡っ引き」など)をされているので、元国税職員として、いろいろと考えさせられるということもあり、先生の書籍を購入して読んでいます。

「検証 国税 非公開裁決 情報公開法が開く審判所の扉」(山本守之先生監修 ㈱ぎょうせい)に珍しい事案が掲載されていましたので、その事案を読んで思ったことを書いてみようと思います。

ざっくりと事案の内容

税務署には、時間外収受箱という税務署の開庁時間外でも申告書等を提出することのできる郵便ポストのような箱が設置されています。

たとえば、3月決算の申告期限の5月31日の夕方5時以降に申告書を提出したい場合は、この収受箱に投函すると、翌朝、総務課の職員が回収して、5月31日に申告書が提出されたとして取り扱ってくれるというものです。

書籍に掲載されていた事案は、2月決算の法人が申告期限の5月1日(4月末はみどりの日の振替休日のため、翌日が申告期限となっていたようです)に収受箱に申告書を投函したものの、税務署側では、ゴールデンウィーク明けの5月7日に申告書を受け付けたと認識して、無申告加算税を賦課決定したところ、これに対して、納税者が5月1日に提出しており、期限内申告であるため、無申告加算税の賦課決定は取り消されるべきであるとして、国税不服審判所で争った事案とのことでした。

どっちが正しかったのだろう

審判所は、「いずれの日か断定するに足る証拠は認められない」ものの、「回収漏れとなっていた可能性を否定できない」として、無申告加算税の賦課決定を取り消しています。

「断定するに足る証拠は認められない」とされているので、考えるだけ無駄かもしれませんが、納税者と税務署のどっちが正しかったのだろうかと考えてしまいました。

時間外収受箱って、記憶ベースですが、後ろが、バカっと開くような仕組みになっていて、中に入っている封筒類が一覧できるような作りだったように思うので、

「回収漏れって本当に起きるのかね?」

という素朴な疑問があります。

ただ、人間のやることなので、思いもしないミスが生じることはあるので、回収漏れが絶対に起きないかというと、そんなことはないとも思います。

この裁決事例では、時間外収受箱の形態や設置場所を分析して、回収漏れが起こりうるかを検証していました。
(ここまでやるんですね。)

私の考えに完全にバイアスがかかっているのはわかっているのですが、審査請求人の証言に何点かひっかかる点がありました。

「周りの人がわざわざそんなこと聞くかね?」と。

なんて、思いつつ、読み進めていたのですが、ふと考えてみると、審査請求までしているので、単に期限内申告とすべく、チャレンジした事案でもなさそうに思います。
(真実は神のみぞ知る。つまり、誰にもわからない。)

本当は期限後に投函したけれども、なんとか頑張って、期限内申告っぽい事実を勝ち取った事案なのか、本当に期限内に投函しており、税務署側も、なんとなくミスったぽいなとわかっていたものの、明確な証拠もないような状況で無申告加算税を賦課しないわけにもいかず、その結果、争いにまでなってしまった事案なのか、どっちなんだろうかと気になってしまいました。
(書籍が期待するところとは違うのは理解しているのですが、考え出すと止まらない。)

今は昔に比べて無申告加算税の争いが減ったのではないかと思います。

この事案は平成13年に起きた事案ですので、まだ、無申告加算税の宥恕規定(国税通則法施行令27条の2)がなかった頃の事案です。

宥恕規定が出来てからは、無申告を繰り返している法人など、加算税を賦課されても致し方ない状況で賦課決定されているので、争いはなくなったのかな~と思っていたのですが、まだ、争いは起きているようでした。

無申告加算税の賦課 | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所

お金が絡むことですので、一筋縄ではいかないようです。

裁決の内容よりも、これが気になった

この事案の詳細が気になる方は当該書籍をお買い求めいただければ良いかと思いますが、私は、この事案の中身はさて置き、下記の記述が非常に気になりました。

2 原処分庁の主張

申告書は、平成13年5月7日6時30分ごろに原処分庁の総務課職員によって文書収受箱から回収されたことにより

「6時30分ごろ」とありますが、これは夕方の6時30分ではありません。朝の6時30分です。

「朝早くないか?」と。

実際にこのルールがあるのかは知らないのですが、国税組織では、最長で2時間の通勤時間までは通勤圏内として扱われていると聞いたことがあります。

ざっくりイメージですが、通勤時間が2時間ですと、東京都の西のエリアにお住いの税務職員さんは、お隣の県の千葉市内エリアの税務署まで通勤圏内扱いとなります。

とはいえ、実際のところは、1時間~1時間半くらいが一般的な通勤距離として取り扱われているように当時感じていましたので、当該事案の総務課職員(おそらく係員)の通勤時間を1時間とすると、6時30分までに勤務先の税務署にある時間外収受箱を開けるためには、5時30分に自宅を出る必要があるということになります。

早起きさんですね。

「なんで、総務課職員はこんなに朝早くに来ているんだ?」

と思われるかもしれませんが、お仕事がたくさんあるから、ということと、同じように朝早く来る職員がいるから税務署の職員専用の通用口のカギを開けないといけない、ということが理由です。
(ほかにもあるかもしれませんが、総務課の経験がないのでわかりません。)

今になって思うと反省しかないのですが、私は、この「朝早く来る職員」の一味でした。

電車が混まないのと、当時一人暮らしでしたので、誰にも迷惑をかけていないということからだったのですが、今になって思うと、総務課の職員の方々に迷惑をかけていますね。

宿直が昔はあったらしい

私が税務署に配属された頃にはもうなかったのですが、昔は税務署に職員が宿直として泊っていたそうです。

手当があるとかないとかで、独身の若手職員には、良い制度だったそうな、そうでもなかったそうなと、さまざまな思い出話を聞いたことがあります。

この事案の総務課職員も宿直だったのでしょうか。

でも、平成13年だと、私が税務署に配属された平成17年とそんなに年数が変わらないので、もうすでに廃止されていたのかもしれません。

実務にまったく役に立たない情報をつらつらと書いてしまいました。

何をしているのでしょうかね。私。

日々精進。


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